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「じゃあ何でだよ？」
心臓が沸々と音を立てる。どうしようもない叫びが、俺を突き動かした。勢いよく振り向き、慎太郎に掴みかかる。
「主治医なのに、何で治してくれなかったんだよ！？」
「北斗、」
点滴が抜けたのか、腕を血が伝う。じゃあ、これは？顔を伝っている、これは？視界が滲む。
「俺は出来ること全部やったよ！薬も検査も制限も！！全部守った、守ったのにっ、死ぬって言われて、まだ27なのに、何で、何でっ！！」
「頼む、鎮静剤投与して。あとカニューレを酸素マスクに切り替えて、点滴抜けてるからその処理も。‥松村さん、ゆっくり呼吸しましょう。僕の目を見て下さい」
森本先生が、近くに居たであろう看護師さんに淡々と指示を出す。先程までは感じていなかった筈の心臓の収縮に、思わず顔を歪めた。
そこからの記憶はない。
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目を覚ましてまず見えた天井に、辟易とする。体中に管が繋がれていて、思うように動けなかった。首だけ動かし、視界に入ったカレンダーを見て、一つ溜め息をつく。あれから4日間、俺は眠り続けていたようだ。
仕方なく押したナースコール。ずっと見張っていたのかと疑ってしまう程速く、森本先生は来た。喧嘩も、俺が意識を失っていたことも‥全てをかき消そうとするような、いつも通りの、それでいて、何処か痛々しい笑みを浮かべていた。
「おはようございます松村さん、気分はいかがですか？」
「‥‥くそほど、悪い、かな」
そう呟けば、彼は悲しそうに笑った。酸素マスクが白く濁る。
「‥俺、分かってる、よ。もう3年も生きれない、でしょ」
「‥そんなわけない」
「前、余命3年って言われた、けど、仲直りの握手も出来ないんじゃ、もう、終わりだよ」
そう言って、己の体を見つめる。担ぎ込まれる度、増えていく管たち。こんなんじゃ、慎太郎と4日前の仲直りの握手すら出来ない。
「大丈夫だよ、北斗」
酷く落ち着いた、否、落ち着いているように見せ掛けた、慎太郎の声が聞こえた。
「握手なんてしなくたって、北斗と俺は仲直り出来るから、大丈夫なんだよ」
慎太郎の声が震えていた。時折顔に腕を持っていっているのが見える。ただ彼を見つめながら、俺は「ごめんね」と呟く。慎太郎がブンブンと首を振る。俺のせいで慎太郎も傷ついているのが、悲しいほどに分かった。
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作者名：輝月姫 | 作成日時：2023年8月22日 16時
