吉野順平ガチ勢が原作をぶっ壊す話3

桜ノ樹ノ下ニハ死体ガ埋マッテル ページ42

｢あ…｣


ふと、隣を歩く順平がそう言葉を漏らす

何かと思い彼の方を見やると、視界に桃色の花弁が揺れるのが見えた

見上げればそこには満開の桜の木が咲いており、落ちてくる花びらを掌に受け止めた


『桜……もうそんな季節か』

｢そういえばもう4月になるのか、今年は暖かかったし満開になるのが早かったんだね｣


鮮やかな桃色の花弁を散らし、悠々とそこに佇む桜の木

美しくも、どこか引き込まれるような恐ろしさをもつその様に

思わず、頭に浮かんだ言葉は漏れる


『桜の樹の下には死体が埋まってる』

｢…死体…？｣

『いや、なんかの小説が元ネタのやつ。都市伝説だろうけど、なんか不思議と信じたくなる』

｢あぁ、確かに…美しさって、時に毒にもなるからね…｣


その言葉に、ふと頭に彼の澱月の姿が浮かんだ

淡い青を短調とした、穏やかな海を連想させる澱月、そして澱月の形態変化【毒牙】は

深海の深い海を連想させ、その美しさには危険なほどに心を奪われる

桜もきっと同じだ、美しいとは、人の心を奪い、魅了し、支配する

だとしたら……


『ボクにとっての桜は、順平かな…』

｢僕…？｣

『美しさは人を魅了して、時に毒へと変わる、なら…ボクにとっての美しいモノは順平だなって思って』

｢えっと…貶されてる？｣

『まさか、褒めてるよ』


彼の髪を撫でて、少し目を細める

彼は儚く、美しく、人を引き寄せる甘い蜜のような存在だ

そして、ボクはその美しさに魅了されている

美しい彼をこの腕に抱いている

ならばボクは彼の【毒】となり、彼を取り巻く盾となろう


『なんて…さすがに重いか』

｢重い…？よく分からないけど、Aは重くないよ、細いし｣

『ふはっ‪w…うん、ありがと』



彼の深緑の大きな瞳がボクを映す

彼にあってからボクは随分と傲慢になった


｢あっ、そうだ。今度悠仁達もつれてお花見とかしない？1日くらいならお休み取れると思うし｣

『いいね、でもひとついい？悠仁のこといつから下の名前で呼ぶようになったの？？？』

｢えっと、この前Aが任務に行ってる時にA以外の1年生が揃ってたから映画を見て…それで…｣

『待って聞いてないボクも誘ってよ任務放り出して行ったのに』

｢それはダメだよ？！｣



桜の花弁を踏んで、ボクらは歩く

もしも本当に桜の下に死体が埋まっているのなら、どうかその血肉で美しい花を咲かせてくれ

その花弁を浴びてボクは愛を紡ごう

埋まった死体の分までね

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