episode 2 住居 ページ5
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「さて、と」
また殺されてはたまらないので赤城坂の管理下にある家で生活はできない。うちは養子は取らない方針なのでその手の嘘も通用しない。
兄はそこまでしなくても薬の入手元が怪しんで調査されたら終わりだ。よって赤城坂のお金も一切動かせない。
夜道をあても無くぺたぺたと歩きながら、私は考える。
「そうなると……」
一人で隠れ住むのが一番効率的ではある。しかしその場合働くこともできないこの体ではどう頑張っても生活できない。
路上生活となると薬の解毒という一番達成しなくてはいけない目的を見失うことになる。
「もしかして割と詰んでるのかな」
その時、思考に夢中になっていたためか、人の足にぶつかった。
「わ、ごめんな、さ……い……」
「おう、こっちこそわりーな……」
見上げると、そこには見知った顔。父と高校の同級生だったマジシャン、黒羽盗一さんの息子である黒羽快斗君が居た。
彼自身と私も親を通じてかなり幼い頃から一緒に遊んでいて、話が合ったこともあり今ではかなり仲の良い幼馴染となっている。
「……嬢ちゃん、家どの辺だ?こんな夜道を一人で歩いてると危ねーぞ」
しゃがんで顔を覗き込まれて少し焦った。前髪で右目を隠したり、下ろしていた長い黒髪を耳下で2つに結ったりと軽く変装はしたが、頭が切れる彼にはバレる時はバレる。
幼児化事実隠蔽の為にも、薬の入手元にバレた時の快斗君の安全の為にも隠し通さねばならない。
「えっと……杯戸町の方。今からあっちのバス停でバスに乗っておうちに帰るの」
嘘である。近場を答えると送られる可能性があるので、バスを使わないと行けない杯戸町だと答えた。バス停はここから徒歩3分程度なのでそのまま見逃してもらえる可能性が高い。
「そうか、ならバス停まで送ってやるよ」
……事は無かった。
「大丈夫。道わかるし、防犯ブザー持ってる」
これも嘘である。バス停まで着いてこられると赤城坂Aの財布を見られてしまう。
「ほーん?お前、杯戸町から何しにこんなとこ来たんだ?靴は?」
「ピアノのお稽古。……靴は、いじめっ子に捨てられた」
これも大嘘である。いじめという触れにくい話題によって彼を遠ざける作戦……
「そりゃひでえな。この近くだとヤマワ音楽教室か?」
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瀬天心葉(プロフ) - わっ、これ好きです!夢主ちゃんとても可愛いですね!これからも頑張ってください! (2020年2月18日 19時) (レス) id: 7f9bbdec25 (このIDを非表示/違反報告)
せろり。(プロフ) - 神作の予感しかしません。どうしたらいいでしょうか← (2020年1月12日 22時) (レス) id: b178d32fe6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小紅 | 作者ホームページ:Twitter @kobeni_yume
作成日時:2020年1月12日 14時