前代未聞の女の子 (ページ17)

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〈開幕戦〉試合後ページ17

試合後

宇田川「いっぱい写真撮っちゃった」

福也「A凄かったなー！かっこよかったよ！」

宮城「Aさんえぐかったっす！！」

山岡「ベンチでみんなにもみくちゃにされてたのも可愛かったぞー笑」

ベンチに居なかったピッチャー陣がいっぱい褒めてくれた
前までこういうのはなかったからなんだか恥ずかしくなってくる

『え、へへありがとうございます…

　あっ！由伸！』

由伸を見つけて一目散に走る。今日は由伸のおかげで活躍できたようなもの。

『由伸！今日は色々ありがとう、由伸のおかげでうまく行けた気がする…』

ふと由伸の顔を見上げると優しくそれでいて切ないような目で見つめていた

山本「…ううん、全部Aの力だよ。」

そう言って柔らかな手つきで私の頭を撫でると由伸はロッカーへ帰ってしまった

『(…由伸がいつもと違う、気がする)』

かくいう私も心の中は言葉では表せないような、なんとも言えない感情が渦巻いていた

・

・

みんながロッカーに帰っていき、1人になった廊下でスマホをチェックした。

内容は前のチームの試合結果。
みんなの楽しそうな顔が乗っている

『…』

「何みてんの？」

後ろからの声にびっくりして勢いよく振り向く

『！？そ、颯一郎か…』

颯一郎「ごめん、内容見ちゃった。

　 …未練あるの？前のチームに」

『…いや、ない、けど…』

颯一郎「けど？？」

颯一郎の優しい声にのせられて本音がこぼれる

『…私が前のチームのときにもっと同期とコミュニケーションとっておけば…
　同期はこんなことしなかったし、野球ファンの人達も嫌な思いせずに済んだのにな…って』

脳裏によぎるのは今日のブーイング。冷静になってみると心にくるものはあった

『…ごめん、やっぱり今の忘れ、…』

最後の一文字を言おうとしたとき、私は颯一郎の胸の中にいた

颯一郎「俺はAと会えて、野球できて、良かったと思ってるよ」

大きな体に包まれるとなんだかものすごく安心感があって
自分でもよくわからないうちに泣いてた

仲間に裏切られた辛さ、努力しても皆に追いつけない苦しみ、認めてもらえない悲しさ

そのすべてが颯一郎の言葉で溢れ出たんだと思う

私を落ち着かせるように背中をさする颯一郎の手が心地よかった