-Episode58- ページ10
「本当に私ですか?」
あの場にいた夏油さんの顔を見ると静かに頷く。
夏油「悪いけど報告書に書かせて貰った。結果、上層部からの指示で君は暫くの間悟と任務をして貰うことになった」
五条「メンドクセー」
「…私は何もしてません!」
夏油「じゃあ誰がしたんだろうね」
返せる言葉が見つからない。
「それは」
五条「自分だけど体が勝手にってそんな上手い話があるか」
家入「それぐらいにしてやらないか、クズ共」
五条「ッち」
家入「体調はどうだ?」
「問題ありません」
家入「念の為、明日は休みにしといた」
「ありがとうございます」
家入「ほら此処から出て行け」
五条「へいへい」
二人は出て行く。
家入「水」
「ありがとうございます」
体を起こす。
ペットボトルを受け取ってキャップを開けていると家入さんはさっきまで五条悟が座っていた椅子に座る。
家入「顔色があまり良くないな」
小さい手が顔にかかっている髪を耳にかけてくれる。
家入「アイツらが何を言ったか知らんがあまり気にしないほうがいい」
「でも、私がやったんですよね」
家入「らしいな」
改めて聞くとどうしてって疑問の言葉が次々に湧いて頭の中を回る。
家入「一つ、聞いてもいいか?」
「はい」
家入「最近、太腿に痣が現れたとかは無いか?」
「太腿に痣?」
家入「あァ」
「いえ」
家入「そうか」
「何かあるんです?」
家入「気にしないでくれ」
夏油さんも家入さんも五条悟も私に何か隠し事をしている気がする。
言いたいけど言えない顔をよくするから。
家入「五条との任務は苦労するだろうが何かあったら聞くからな」
「助かります」
家入「じゃ」
立ち上がって去って行く家入さんから香った煙草の匂い。
嫌いじゃない。
両手で握ったペットボトルの水を一口、二口飲んでキャップを閉めてベットに寝転んだ。
何も掴んでいない両手を開いて閉じてを繰り返していると隣のベットを遮っているカーテンに誰かが立つ影が視界の端に映った。
三人の誰かが戻って来たのだろうかと首を傾げながらカーテンを開けると人の形をした影が立っている。
「わッ!」
咄嗟に枕を投げたが貫通して隣のベットに転がった。
影は私の頬を撫でると溶けるように消える。
何だったんだ。
もう頭がおかしくなりそう。
シーツに顔を押し付けて目を瞑った。
どうか、今度は変な夢を見ませんように。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時