-Episode54- ページ6
夏油さんの後ろに隠れながら廃墟の中に入ると湿った空気に包まれた。
冷気のような冷たい風が頬に触れる。
背中から顔を出すと中が一望出来た。
「工場?」
夏油「そのようだね。悟、私達は事務所を見て来るよ」
五条「はいはい」
雑に手を振って真っ暗の方へ歩いて行ってしまう。
夏油「大丈夫だよ。悟は目が良いから」
「それが六眼とか言うのなんです?」
夏油「そう」
「へェー」
夏油「Aちゃんはどんな術式を?」
「私は…ッ!」
大量に廊下の窓に張り付く呪霊につい驚いてしまった。
窓は圧に負け割れる。
目の前を飛び散る硝子と共に呪霊が私達の前へ。
夏油「どうしようか、このまま私が祓ってもいいけど…Aちゃんの実力が見たいな」
手を顎にあてながら言う夏油さん。
「な、なんでそんな冷静でいられるんですか?」
訳が分からない。
今、目の前に私達を殺そうとしてる呪霊がいるんですよ?
しかも、足が多い。
気持ち悪すぎて直視出来ないよ。
目を背けると後ろにもいた。
囲まれている。
「夏油さん」
夏油「ん?」
「ん?じゃなくて囲まれているんですが…」
夏油「これぐらいの低級ならAちゃんでも祓えるよ。ほら、どうぞ」
「え、ちょ、ちょっと!」
家入さんの言う通り夏油さんもなかなかのクズだ。
焦りにしゃがんで頭を抱える。
片手を地面に向けると私の影がゆらりと揺れた。
「やれそう?」
返事をするように影が大きくなる。
大きな一つ目の真っ黒な眼と三日月の様な口が現れた。
そして一瞬にして影は針に変化し呪霊を串刺しにした。
「食べていいよ」
静かに唱えると口がまた一段と弧を描く。
串刺しにされた呪霊達は影に沈んで行った。
「お、終わりました」
壁にもたれている夏油さんを見ると化け物を見たかと思うぐらいに目を見開いていた。
夏油「本当に非術師の家系?」
「はい、両親は視えません」
夏油「他には何か術式は使える?呪具だしたりとか」
首を横に振った。
「…体が勝手に動くんです」
夏油「乗っ取られるとか?」
「分かりません」
考えた事が無かったがもしかしたら私の中に他の誰かがいたりするの?
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時