-Episode53- ページ5
過去一番全力疾走した。
階段を飛ばしながら下りると一台の車が見える。
スーツを着ているのは補助監督と呼ばれる高専関係者。
その人が私に気づくと助手席の扉を開けてくれる。
「す、すみません!遅れました!」
『いえ、たった今お二人も来られましたので』
助手席に乗ると後ろからの圧に圧倒される。
「すみません」
夏油「私達も今来たところだから気にしないで」
五条「どうせ寝てたんだろ」
「はい」
運転席に補助監督の人が座ると車はゆっくり動き出す。
夏油「そう言えば昼、悟が君の髪紐取ってしまっただろ?私の使ってないのあげるよ」
「え!でも…」
夏油「予備なんて幾らでもあるから、はい」
後ろから手が伸びて来るので大きな手から渡されるヘアゴムを受け取った。
「ありがとうございます」
夏油「あーあの髪紐と違ってそれに…った」
五条「余計な事を話すんじゃねェよ」
後部座席で言い合いを始めた二人。
どうして家入さんがいないの。
助けて。
補助監督が咳払いをすると二人は大人しくなる。
『先程、窓の追加報告が入りました。呪霊は一級相当だと』
夏油「一体だけですか?」
『他には低級もいるようです』
五条「んじゃ、雑魚はお前な」
急に座席を蹴られた。
「は、はぃ」
あまりにも怖すぎて声が裏返ってしまう。
早く目的地に着いてくれ。
シートベルトを強く掴みながら願った。
その後の車内は主に後ろの二人が会話するだけ。
目的の廃墟に三十分で着いたが体感は二時間ぐらいだったな。
車内から下りてすぐに緊張で凝り固まった体を解すように伸びをしていると補助監督が何かを唱え始めた。
辺りがより一層暗くなる。
夏油「帳だよ。周囲から私達を見えなくする」
「へェー」
夏油「Aちゃん、あっと鵜久森さん」
「Aでいいですよ」
夏油「ありがとう。Aちゃんは、初めてだから私と行動しよう」
「はい!お願いします」
良かった。
一人で廃墟に入って行ってしまう五条悟じゃなくて。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時