-Episode83- ページ35
昼食を終えて、天元や上層部に報告をして旧寮に帰って来た頃にはもう夕日は沈んでいた。
冷蔵庫を開けるが何も入っていない。
「煙草」
鵜久森Aには悪いが煙草を吸わせて貰おう。
建付けが悪くなったベランダに続く窓を開ける。
生温い風が頬を撫でた。
いつの間にか新しくなったサンダルを履いてベランダに出る。
煙草をくわえて柵に肘をついて火を点けた。
深く、深く、吸い込むと噎せる。
久しぶりに吸ったからじゃない。
体が拒否しているんだ。
何度か咳をして落ち着いたらまた吸う。
徐々に灰になっていく先端を空っぽの灰皿に灰を落とす。
半分ぐらいになった頃だろうかベランダの窓が開く音が聞こえた。
「不法侵入」
五条「鍵、開けっぱにしてる奴が言う台詞じゃねェよ」
返す言葉もなく煙草を灰皿に押し付けた。
「何か飲む?」
五条「ココア」
「そんなのあったかな」
部屋に戻ると明かりが灯っていた。
綺麗に片付いた部屋。
きっと全て悟がしてくれていたのだろう。
冷蔵庫近くの棚を開けるとココアの袋が顔を出した。
これも買った覚えがない。
ポットに水を入れてスイッチを入れた。
ソファに寝転がっている悟の近くに座るとあくびが自然と出てしまう。
五条「眠いの」
「うん」
五条「ん」
ソファの半分を空けてくれたのでそこに座る。
悟の肩に頭を預けた。
五条「アイツ、最後に何て言ってた」
「私の夢を叶えさせてあげるって」
五条「夢?」
「悟の隣にいる夢」
少しだけ上を向くと悟も私の事を見ていた。
五条「いればいいだろ」
「いていいと言うのなら」
五条「駄目な理由がねェ」
小さく笑っていると悟がサングラスをローテーブルの上に置いた。
眠たいのか疲れたのか目を擦る。
その時、抜けた白い睫毛が私の袖に落ちた。
それを指先で撫でるように掴むと悟の手が私の頬に触れる。
何だろうかと見上げるとゆっくりと悟の顔が近づいて来た。
鼻先同士が触れ合うと私は目を瞑る。
すると柔らかな感触が唇に触れて離れてを繰り返す。
薄っすらとポットが音を立てた気がしたが聞こえていないふりをして悟の首に腕を回した。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年9月2日 9時