-Episode79- ページ31
またこの空間だ。
闇の中に私と近衛Aが立っているだけの。
「どうしたらあの男を止めれるの」
『止めたいのか？』
「それは貴方も同じなんじゃないの」
そう言うと笑った。
『あァ、私は悟と生きたいからな』
「じゃあ、その願い叶えさせてあげる」
私の言葉がどうやら近衛Aの思っていたことと違ったのか酷く驚いた顔をされた。
別におかしいことを言っているつもりはない。
「五条悟には貴方が必要だと思った。その逆で貴方にも五条悟が必要だと思った」
『今の状況を分かって言っているのか』
「うん。だから私の全部をあげるからあんなゴミ屑がいない世界を作って」
『…本当にいいのか』
「私は足手纏いだし、すぐ殺される。ここで私の人生が終わっちゃうのは悲しいけど」
『鵜久森A』
「ん？」
目の前にいる近衛Aが私のことを抱きしめる。
『次、お互いに別々の体で生まれ変わった時は友達になろう』
「当たり前だよ。私は貴方で貴方も私なんだから」
耳元で微かな笑い声が聞こえる。
『ありがとう』
近衛Aの背中に手を回すと私の体が溶ける様に吸い込まれる。
「五条悟にちゃんと愛を伝えるんだよ」
最後に残した私の言葉は呪いの言葉じゃなかったかな。
幸せになってよね、私の分まで。
近衛A。
重たい肉体の感覚に目を開けると大量の札が張られている部屋の椅子に私は座っていた。
唯一動かせる頭を持ち上げると首筋が痛んだ。
左右に傾けると音が鳴る。
あれから何日が経った。
鵜久森Aの体を手に入れたが呪力の全回復に時間がかかってしまった。
もしかしたら悟は殺されているかもしれない。
「困ったな」
呟くと一瞬、地面が揺れた気がした。
試しにと腕や足に絡みついている縄を燃やすとすんなりと燃える。
椅子から立ち上がって体の調子を確かめてから札が張らまくった扉を触るとこちらもすんなりと開いた。
天元の結界が弱まっている？
同化は失敗したのか？
薄暗い階段をゆっくりと登って行く。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年9月2日 9時
