-Episode69- ページ21
呻き声や骨の折れる音が聞こえる。
「後に解放はしてやる」
指で音を鳴らすと領域が消えた。
夏油「悟は何処だろうか」
何も無くなった倉庫には悟の姿は無い。
「囮だったか？」
夏油「でも髪紐は此処にあるんだろう？」
「そのはず」
地面に耳を付ける。
目を瞑り、伝わって来る微かな音を聞く。
夏油「どう？」
「何も聞こえない」
夏油「だとするとやっぱり囮だったか」
地面から耳を離そうとするとほんの微かに金属同士がぶつかる高い音が聞こえた。
「いる」
夏油「何処に」
「下だ」
夏油「下？」
「傑は壁を叩いて空洞が無いか探してくれ。私は地面を調べる」
夏油「分かった」
二手に別れ、隠し階段を探す。
時々、耳を地面につけたりしたが音はさっきのだけ。
他は私達の衣擦れや歩く音のみ。
夏油「Aちゃん、此処だ」
傑の声が端の方からよく響いて聞こえる。
すぐに向かう。
壁に手を触れようとすると弾かれた。
「帳か」
夏油「しかもAちゃんが入れない…」
「傑は触れられた」
夏油「私が行って来るよ」
「…頼んだ」
夏油「中には悟しかいないだろうし。大丈夫だよ」
「なら私は彼女に体を返すとしよう」
夏油「悟に会わないのかい」
「……」
黙っていると傑の大きな手が頭に触れた。
夏油「分かったよ。行って来る」
傑が壁を呪霊を使い、壊し中に入って行く。
階段が見えるがその奥はどうなっているのか分からない。
「気を付けて」
傑は返事の代わりに手を挙げて階段を下りて行った。
「会わないのかい、か」
壁に背を預けて座る。
膝に顔を埋めて目を瞑った。
死ぬなと言われたのに死んだ私を彼はどう思っているのだろうか。
一言、二言がこんなにも重たいとは思っていなかった。
考えていると爆発音と共に私の体は吹き飛ばされた。
転がった体が半壊した瓦礫に激突し止まる。
すぐに立ち上がろうとしたが足が瓦礫に埋まってしまっていた。
立ち込める煙が落ちつくと見える光景に目を疑う。
悟が傑の首を絞めていた。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年9月2日 9時
