-Prologue- ページ1
季節でもないのに耳元ではっきりと聞こえた花火の音に目を覚ました。
ぼやけている視界が徐々に定まってくると柄の何もない白い天井が見える。
『Aー。今日から学校でしょ』
そう、母の声が扉越しに聞こえた。
部屋の壁に掛けてある時計が示す時刻に飛び起きた。
「お母さん！昨日、起きて来なかったら起こしてって言ったじゃん！」
乱れた髪を手櫛で直しながら階段を落ちそうな勢いで下りる。
『何度も起こしたわよ。全く、明日から寮なのに大丈夫？』
「大丈夫！女の先輩もいるって言ってたし！」
浮腫んでいる顔に冷水をかけ、まだ目を覚ましていない脳を起こす。
また階段を駆け上がる。
一週間前に届いた制服が入った段ボールを開けると制服と共に鞄も入っていた。
雑に机の上に置いてあった筆記用具一式と財布に音楽プレーヤーを鞄に入れる。
先に寮に荷物も送ってあるしこれぐらいで大丈夫でしょ。
「にしてもカスタム出来る制服って凄いな」
狩衣に似た黒色の制服に手を通していく。
最後に姿見の前で一回転する。
「うん、ぴったり」
長く伸ばしている赤色の髪を手櫛で纏め、いつ買ったか忘れた淡い青色の髪紐で縛る。
鞄をひったくるように持って急ぎ足で階段を下りた。
『朝ご飯はー？』
リビングから聞こえて来る声。
扉を開けて顔を出すとテーブルに用意されているは卵かけご飯。
これなら食べれると椅子に座った。
『お姉ちゃんの制服変』
目玉焼きにソースをかけている妹が言う。
「五月蠅い。私は和装が好きなの」
『ほんとアンタ達って性格真逆よね』
「目玉焼きは絶対塩胡椒」
『はァ？絶対ソース！』
「塩胡椒！」
『朝から喧嘩しないで頂戴』
『てか、宗教系の学校って大丈夫？』
「いただきます。大丈夫、大丈夫」
生まれた時からだろうか物心がついた時からだろうか私には不気味な生き物が視えていた。
それはどうやら私の家族は視えないらしい。
一ヶ月前、別の高校に進学が決まっている私の元にスーツを着た男の人が二人来て不気味な生き物のの説明を淡々と話した。
話の中で勉強をしながら不気味な生き物を倒せばお金を稼げるというのには凄く魅力的ですぐに、はいと返事をして入学を決めてしまったせいで母親には怒られたが妹の学費は私が出すと言えば黙った。
卵かけご飯を飲み物のように食べ、歯茎から血が出そうなぐらい力強く歯を磨いて草履を履く。
「いってきます！」
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年9月2日 9時
