美しさに触れ、触れられたい【呪術廻戦】 (ページ50)

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-Episode49- ページ50

Satoru Gojo side

満開だった桜も全て散ってしまい普通の木と変わらなくなってしまった。

年季の入った旧寮の二階ベランダを見上げてもAは出て来ない。

花火大会の次の日に時刻も極秘裏に向かったらしい。

室外機の上に乗った灰皿にはべったりと紅の付いた煙草が山になっている。

きっと俺達と別れてから吸っていたのだろう。

夏油「心配することないさ、彼女は君と同等で強い」

五条「分かってる」

夏油「それに君と約束…違うか。縛りをAちゃんとしたんだろ？」

五条「別にあれはそういうのじゃねェよ」

夏油「私や硝子、他者視点見れば死ねって言うまで死ぬなは縛りだと思うが？」

五条「そうでも言わないと呪霊になって化けて出たらどうすんだよ」

携帯を出してメールの確認をしていると最後にAに送ったメールが表示された。

『帰って来たら晩飯何がいいか考えとけ』

これに返事は返って来ていない。

慌ただしく後ろから複数の革靴の音が聞こえると数人の補助監督が俺達を抜いて行った。

夏油「何かあったのだろうか」

五条「さァな？」

「悟」

一瞬、Aに呼ばれた声がして振り返ると黒色の水溜りが地面に出来ていた。

夏油「これはAちゃんの」

ゆっくりと黒い手が出て来ると手招きされる。

もう一本出て来ると何か握っているように見えた。

しゃがむと手は俺の方に伸びて来るので反射的に手を器にすると軽い紐の様なのが手に乗っかる。

瞬間、隣にいた傑の口から息を呑む音が聞こえた。

黒い手が灰の如く消えて行く。

俺の手に残ったのは、半分まで焦げたAがいつも縛っていた髪紐だった。

髪紐に残る呪力と血。

夏油「悟！」

無我夢中で走っていた。

俺達を抜いて行った補助監督の一人の腕を掴むと酷く怖がった顔をされた。

口を開いて言葉を紡ごうとしたが被せられる。

夜蛾「二年、近衛Aの死亡が現地に同行していた窓によりたった今報告された」

は。

夜蛾「天元様曰く通常であれば死後直後に転生するが現時点では転生の確認が出来ていないとのことだ」

手に握っていた髪紐が泥の様に溶けて消えた。