-Episode47- ページ48
「帯、緩くないです?」
家入「うん」
あっという間に花火大会の日は来た。
聞いた話によればあの補助監督は退職をしたらしい。
ただでせ人手不足なのに申し訳ないと話をすれば新しい人が入って来るから問題無いと言われた。
きっと彼もそれを知って辞めたんだと思うと。
家入「この浴衣はAのなの?」
「えぇ、昔持っていた物によく似ているのを数年前に見つけたんだけど着る機会がなくてずっと仕舞っていたんだけど良かった」
部屋にある姿見に映る硝子。
家入「ありがとう」
「私もすぐ着替えて行くから待ってて」
家入「うん」
硝子が部屋を出て行ってから壁に掛かっている浴衣を着て行くがやっぱり一人だと難しい。
扉がノックされる音が聞こえる。
忘れ物でもしたのだろうか。
「はーい」
返事をすると扉から顔を出したのは悟だった。
五条「…悪ィ」
ちょっと前にもこんなことがあったなと笑ってしまう。
「帯が縛れないから縛って欲しいんだけど」
五条「自分でやれよ」
「出来ないから言っている」
深い溜息が聞こえると浴衣姿の悟が部屋に入って来る。
「結局、着たんだ」
五条「傑が五月蠅くてな」
後ろに立つ悟に帯を渡す。
「硝子の浴衣どう?」
五条「アイツにしては似合ってた」
「あれね、私のなの」
五条「だろうと思った。あんないいのアイツが持ってるわけねェし」
「分かるんだ」
五条「坊ちゃんだから」
笑うと勢いよく帯を縛られた。
「く、苦しい」
五条「早く言えよ」
鏡越しに悟を見るとまるで後ろから抱きしめられているみたいだ。
耳にかけていた髪を顔に持って来る。
五条「髪は?」
「縛るよ」
五条「そ」
最後の赤い帯を渡す。
慣れた手つきで縛られていく帯を見ているとすぐに終わった。
お礼を伝えようと振り返ろうとすると髪に悟の手が触れる。
髪紐を渡そうとしたが別の紐で結われる感覚。
五条「ほら」
「え」
結ばれた髪を前に持ってこられると淡い青色の髪紐で結ばれていた。
「綺麗」
まるで六眼みたいな。
五条「やる」
「いいの?」
五条「あーそれみたいに呪具じゃねェからな」
「分かってる」
五条「行くぞ」
「うん」
新しい下駄を履いて寮を出た。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時