-Episode38- ページ39
寮を出ると生温い風が頬を撫でる。
等間隔に並んでいる街灯の下を歩くがいつも先に歩いて行ってしまうのだとばかり思っていた悟は今日は隣を歩いていてくれた。
綺麗に整っている横顔を見ていると悟がこちらを向くとお互いに立ち止まってしまう。
「どうかしましたか?」
何か忘れ物したのだろうか。
見つめ合っていると私達の誰でもない足音が聞こえた。
音のした方に向くと数時間前まで一緒にいた補助監督の姿。
『こんばんは』
「こんばんは」
『二人でこんな時間に何してるんすか』
「寮でご飯を食べてました」
『そうだったんですね。近衛さん、食事明日でもどうです?』
「午後からなら問題はありません」
『じゃあ、十七時頃寮に向かえに行きますね』
そう言って駆け足で去って行った。
五条「アイツと飯行く約束してたの」
「今日の帰りに誘われまして」
止まっていた足が動き出す。
五条「そ」
少し怒ったような素っ気ない返事をされてしまった。
その後の会話は無く、私の住む旧寮に着く。
「今日はありがとうございました」
そう言うと悟は手を軽く振って去って行く。
背中が見えなくなったところで寮の中に入る。
電気のついていない階段を上ってすぐの扉を開けると綺麗とは言えない部屋が顔を出す。
片付けるか。
貰ったおかず達を何も入っていない冷蔵庫へ入れて部屋を片付けた。
作業が終わったのは深夜。
そこからお風呂に入り、寝る頃はもう夜が明けそうな時間だった。
ソファに寝転がるとすぐに眠りに落ちる。
特に夢も見ることなく朝を迎え、いつも通りベランダに煙草を吸いに行く。
いつもは柵に背を預けるが今日は手摺に肘をついて高専を見ながら吸う
掃除をして綺麗になった灰皿を手に持つ。
もう一本吸いたくなったが予定があるので一本をいつもより長く吸った。
部屋に戻り、制服ではなく藍色の着物へ着替えて行く。
髪を一つで結ってから寮を出るとたまたま校舎に行く傑と悟と鉢合わせになる。
「おはようございます」
夏油「おはようございます」
五条「はよ」
「途中まで一緒に行ってもいいですか?」
夏油「勿論です」
二人に近づくと悟がじっと私の事を見つめて来る。
何かおかしいだろうか。
「悟?」
五条「何でもねェ」
夏油「それ私服ですか?」
「天元に会うときはどうしても洋服だと落ち着かなくて」
葉桜の下を三人で歩く。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時