-Episode36- ページ37
寮の共用スペースに連れて来られるといい香りが鼻に香る。
ダイニングテーブルに沢山の料理達。
中には見たことがない物も。
夏油「席は硝子の隣でそっちのキッチンで手、洗って来て貰っていいですからね」
「ありがとうございます」
繋がれている手を離し、私はキッチンで手を洗う。
手先に出来た切り傷に水が染みる。
瘡蓋が水に溶け、渦を巻いている排水口に流れて行く様子を眺めていると隣に人が立つ気配。
顔を上げると傑だった。
どうかしたのだろうかと首を傾げていると水が止められ、洗っていた手を柔らかいタオルで拭かれる。
夏油「そんなに強く洗わなくても大丈夫ですよ」
水気の無くなった手は赤くなっていた。
どうやら気づかない内に強く洗っていたみたいだ。
「ありがとうございます」
夏油「硝子、棚の救急箱から絆創膏一つくれないか?」
その声に少しするとキッチンに硝子が来てくれる。
家入「どうかした?」
夏油「切れていてね」
慣れた手つきで絆創膏を人差し指に貼られる。
「ありがとうございます」
家入「後で軟膏渡します」
「そんな大袈裟な」
家入「折角、こんなに綺麗な手なのに勿体ないですよ。あ、私が毎日塗るんで此処に来てもいいんですよ?」
夏油「硝子」
家入「はーい。食べましょ」
「はい」
貼って貰った絆創膏を眺めながら席に座った。
各自、箸を持つと感謝の言葉を声に出す。
どれに手をつけたらいいか分からない。
家入「嫌いなのとかありますか?」
「いえ」
家入「好きなのとかは?」
「好きなの…」
五条「普段、何食ってんの」
「カップラーメンです」
夏油「…これからは此処で食べて行きませんか?」
「でも」
家入「邪魔だとか思いませんよ。私はいてくれたほうがいいので」
五条「ん」
小皿に盛り付けられたおかずを差し出されるので受け取る。
「これは?」
五条「コロッケ」
「コロッケ」
夏油「硝子、まるで最初の悟を見ている気分だね」
家入「そうだね」
五条「はァ!?俺はこんな酷くなかった!」
箸でコロッケを掴み、一口齧ると表面食感に驚いていると中から柔らかい何かが出て来た。
「美味しい」
自然と出た言葉に三人が嬉しそうな顔をしてくれる。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時