-Episode31- ページ32
呪術師全盛期の時代はこんな異形達と戦っていたな。
蘇る記憶の数々を思い出しながら髪紐を解く。
鎖鞭を回しながら特級との距離を詰める。
向こうは完全近距離型。
有利は私にある。
一瞬だけ遠くにいる二人の様子を見ると苦戦していた。
当たるか分からないだけどやってみるだけの価値はある。
地面に手をつくと柔らかい土の感触が手に伝わった。
そのまま風の術式を使い、土を飛ばす。
すると運が良かったのか土は空中に浮いた。
呪詛師の体に付いたってことだ。
すり抜ける術式じゃなかった。
これで万が一すり抜けていたら厄介だったな。
これで私も思う存分楽しめる。
鎖鞭を首目掛けて伸ばすと掴まれたがその腕ごと斬り落とす。
そこまで斬れると思っていなかったのか酷く動揺としている間に距離を一気に詰めた。
呪力を足に溜め腹目掛けて蹴ったが動かない。
すぐに上がっている足を下げようとしたが掴まれた。
コイツ、先に右手だけ再生したな。
宙吊りにされる。
私の顔を見て笑う。
掴まれている足が燃えるように熱い。
小さい口が変形し気味の悪い大きな口へと変わる。
悪臭が鼻につく。
「領域展開」
空いている手で日輪印を結ぶ。
その一言に呪霊の動きが止まる。
「
辺り一面赤くなり外とは別の空間へと変わった。
私の足を掴んでいる手が離されるので地面に手を付いて後ろに回転する。
そして呪霊の様子を伺う。
呻き声を上げながら足元を踏み荒らしていた。
無駄なのに。
花畑の様に咲き乱れる無数の黒い手が呪霊を欲しがる。
「お食べ」
一言告げると一気に手達が群がり始めた。
暫くの間は肉の千切れる音に耳を傾けたいたがその音もすぐに無くなる。
一つの手が私に伸びて来るので手を皿にすると指が置かれた。
「ありがとう」
現物を見たのは久しぶりだな。
息を吐くと領域が薄れていく。
二人はどうなったのだろうかとあたりを見渡していると頬に水滴が当たった。
雨だ。
もっと早く降れば呪詛師の姿も楽に分かったのにな。
残穢を辿るがだいぶ遠くまで離れてしまっていた。
斜面を下っていた時だった。
ぬかるみに滑る。
踏ん張ろうとするが呪霊の呪いにあてられた傷が痛みそのまま斜面を転がった。
草木を掴もうにも濡れた手では滑ってしまいそのまま崖から落下した。
109人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時