-Episode28- ページ29
『一応、拠点としてこの宿の部屋を一部屋借りているので仮眠などに使って下さい』
寝ている間に目的地である富士樹海付近へと来ていたようだ。
窓から見える老舗の旅館が見える。
「すみません。止めて貰っていいですか？」
『え』
「少しお手洗いに行きたくて。目的地までは自分の足で行くので問題ありません」
五条「俺も」
夏油「硝子、君も部屋で待機しててくれ」
家入「了解」
夏油「私はこのまま補助監督と先に現場に行くね」
「お願いします」
止まった車から降り、生い茂っている森を眺める。
目を閉じ、深呼吸を何度か繰り返す。
五条「何か感じるのか」
「ほんの微かに残穢を感じます」
五条「犬かよ。中入るぞ」
「はい」
旅館の中に入るとすぐに女将が出て来て世間話をしながら部屋に案内してくれた。
部屋は至って普通の和室。
居間に寝室。
女将が出て行ったすぐに窓を開け、景色を眺めると右端に薄っすらと建物の様なのが見える。
五条「あれか」
いつの間にか私の隣に並んで一緒に外を見ていた五条悟が頭上で言う。
「方角的にも間違いないかと」
携帯を出すとやはり圏外。
「家入さん。もし此処で何かあればこの扇子に呪力を流して下さい」
袂から扇子を出し渡す。
「では、行きましょうか」
五条「あァ」
旅館を出てると一体の可愛らしい呪霊が一匹いた。
「傑のでしょうか？」
五条「だな」
近づくと歩いて行ってしまう。
私達は後を追いかけるように山道を歩く。
五条「仮説立ててんだろ、言えよ」
「今の所は、あの補助監督が金か脅しかで今回の呪詛師と繋がっているかもしれないとだけです」
五条「前者の金、だな」
前から一台の車が来る。
山道は、車一台しか走れないぐらいに狭い。
一歩後ろに下がって五条悟の後ろに行こうとするが肩に手が回され寄せられてしまう。
右腕に感じる暖かさに心臓の鼓動が早くなる気がした。
車が通り過ぎるがすぐに止まった音が後ろから聞こえる。
『アンタ達、学生さんかい？』
五条「はい、そうでーす」
『興味本位でこの先の廃旅館に行かないほうがええぞ』
「何か理由があるんですか？」
『旅館の裏に小さな神社があってなそこに何だったかな指？忘れちまったが何かが祀られているって聞いたぞ』
その言葉に私と五条悟は顔を見合わせた。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2023年8月8日 22時
