-Episode18- ページ19
都内に近づくにつれ車内に人が増えだす。
正面に座るスーツ姿の男性の本、隣に座った女性のメールの内容、扉付近にいる制服を着た学生達。
つい、見てしまう。
まだ見続けたい気持ちもあったけど目的の駅に着いてしまった。
電車を降りると構内は人で溢れている。
人と人の波を器用に避けて行く五条悟の後を追いかけるが慣れていないせいもあってか遅れをとってしまう。
目印にしていた白い頭が消えた。
流されるままになっていると大きな白い手が私の手を掴んだ。
見上げると眉間に皺を寄せた五条悟の姿。
五条「待ってって言えよ」
「すみません」
引きずられるように連れて行かれるのだろうと思っていたが私の歩調に合わせてくれているのかゆっくりのペース。
「ありがとうございます」
前を歩く背中に向かって小さく呟いた。
改札を出ると繋がれていた手を離される。
五条「どっち」
「こっちです」
資料に載っている地図を頼りに向かう。
駅を抜け、賑わっている繁華街を抜けると人気が少なくなって来る。
昼間なのに誰も歩いていない薄暗い路地にある一棟のビル。
「此処です」
入る前に帳を下ろす。
しゃがみ足元に出現させた黒い水溜りに手を突っ込み、引き抜くように刀を取り出す。
預かって来ていた鍵で扉を開けると中の空気が鼻に香る。
あまりいい匂いとは言えない。
一歩前に進むと足元で硝子の割れる音が聞こえた。
階段横にあるエレベーターを見る。
九階か。
試しにエレベーターのボタンを押すとランプが点灯し扉が開く。
五条「俺、上から見るわ」
「お願いします」
エレベーターに乗り込んで行った五条悟を見届けてから階段を上って二階から見て行く。
オフィスとして使われていた名残なのか二階の廊下には紙が散らばっている。
扉が外れている部屋を覗くが何もいない。
隣の部屋もその隣も。
一体、二体いると思っていた。
拍子抜けしながら三階へと上がる。
止まって周囲の音に集中するが何も音はしない。
上からも。
貰った資料には清掃業者の一名が行方不明、解体業者は謎の工事事故で作業を中断したと書いてあった。
三階も二階と同じで廊下には紙が散らばっている。
少し量が多い気がするが。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時