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-Episode13- ページ14

嗅ぎ慣れない人の匂いが近くで香ったのに閉じていた目を開けた。

『わッ!』

後部座席の扉を開けて、私の肩を叩こうとしていた補助監督が声を上げる。

周りを見渡すと高専の表門に到着していた。

『もう驚かせないで下さいよ』

そう言って後部座席の扉から離れてくれたので車から降りる。

背伸びをして石畳の上を歩く。

聞こえるはずの草が揺れる音、鳥達の鳴き声が一切聞こえない無音の世界は違和感。

温かな春の日差しにあくびをしながらグラウンド横を通ると一年生三人がいた。

三人も私に気づきこちらを向く。

そのまま通り過ぎようかと思っていると夏油傑が階段を上って私の目の前に立つ。

向こうが口を開いて声を出す前に私はジェスチャーした。

指で耳を差し、その次に両手の人差し指を交差させバツを作る。

あまり慣れない読唇術を使うのは苦労するのを今朝身に染みて感じた。

これ以上、労力を消費したくない。

夏油傑は、私から視線を外しグラウンドの方に何か言葉を放っていた。

どうせ反転術式を使える家入硝子でも呼んだのだろう。

聞こえないのをいいことに夏油傑の横を通り過ぎようとするが足を止めてしまった。

袂を誰かが引っ張ったからだ。

振り向くと袂を掴んでいたのは五条悟。

大きな口を開けて何か言っているが分からない。

首を横に振ると飽きれた顔をされる。

早く離してくれと願っていたがそれは叶わず引きずられるように階段を下ろされた。

階段下にいる家入硝子が会釈するので私もする。

夏油傑が三人は座れるベンチを指差すのでそこに座った。

正面に家入硝子が立つと私の耳辺りに両手をかざす。

耳辺りがじんわりと温かくなる。

耳に水が入って抜けた時みたいに急に音がはっきりと聞こえ出した。

五条「コイツ、なんで自分で治さなかったんだよ」

夏油「はぁ、コイツじゃない。近衛Aさんだ」

五条「あーはいはい」

夏油「全く。硝子どうだい?」

家入「もう聞こえてるはずだよ。そうですよね?」

頷いた。

五条「なら一戦やってけよ」

夏油「悟、近衛さんは任務だったんだぞ」

五条「だから何だよ」

家入「クズ共が騒がしくてすみませんね」

家入硝子が私の隣に座る。

「いえ…いつもこんな感じなんですか?」

家入「大体はあの二人が大々的にって感じです」

言い争っている二人を見ているとなんだか笑えてしまった。

面白いと感じない漫才が急に面白く感じたかのように。

急に笑ったせいか二人の言い争いは止まる。

その代わりに二人の顔が赤くなっていた。

それを見た家入硝子が笑う。

どうしてだろうか。

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作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時

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