-Episode10- ページ11
『俺、お前嫌いだわ』
ずっと、ずっと頭に残って消えてくれない。
そのせいで山になっていた報告書の数々は、インク溜まりがよく目立った。
無意識に机の端を手で探っていたが一向に欲しい物が手に収まらない。
最後の一枚の報告書から顔を上げた。
定位置に置いてあるはずの煙草は無い。
すっかり買うのを忘れていた。
帰りも車に乗って帰ろうと思ったが一緒に帰れるような雰囲気じゃなかったから行きと同じ様に帰って来た。
そして、今に至る。
「買いに行こう」
椅子に掛けてあるパーカーを羽織り、束になった報告書片手に自室を出ようと扉を開けると目の前に先生。
夜蛾「任務だ」
「一年生も一緒ですか?」
夜蛾「いや、違うが何かあったのか」
「いえ」
夜蛾「明日午後から同行任務がある。それまでには戻って来い」
扉を閉めようとすると押さえられてしまう。
夜蛾「何かあったのか」
「何もありません。今からの任務、補助監督を用意して貰えませんか?」
夜蛾「用意はするだが寄り道はしないようにだけ伝えておく」
舌打ちを堪えながら、束になった報告書を押し付けると帰って行ってくれた。
すぐに制服に着替え部屋を出る。
一年生達がいる寮の前を通って裏門に行けば見慣れない補助監督者がいた。
会釈されるのでこちらも同様に頭を下げ、後部座席に乗り込む。
生い茂る森の道を抜けると東京の街並みが見え始める。
段々と近づいて来るネオンの煌びやか光り。
楽しそうに肩を組みながら歩道を歩くスーツ姿の男達。
年も変わらなさそうな女の子達がコンビニの前でアイス片手に話をしている姿。
目に映る人々の幸せそうな光景に私は目を閉じた。
一定の速さで走っていた車がゆっくりと速度を落とし止まる。
『着きました。今回の任務ですが複数の三級呪霊がいるとの情報です』
「了解しました。片付けるのでこれで煙草とライターを買って来て下さい」
お札一枚を手渡すと補助監督が驚く顔をするが無視し、煙草の銘柄を伝え車から降りた。
109人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アルマジロ | 作成日時:2023年8月8日 22時