〜12話〜 ページ13
宴で歌を散々歌ったウタをベットに寝かす。
「おやすみ」
頭を人撫でしてから部屋を出ると、壁にもたれているお頭が目の前にいる。
シャン「ぐっすりか？」
「はい 気持ち良さそうに眠っています」
扉を閉めながら言う。
シャン「1杯付き合ってくれねェか？」
「さっきまで凄い量飲んでましたけどもう酔い醒めたんですか？」
シャン「すっかりな」
笑いながら酒瓶を出すお頭。
「ホンゴウさんには内緒ですからね」
お頭は悪い人だ。
駄目と言うことは全てやりたくなるのだろう。
海賊は皆そうか。
ここ1年前ぐらいからお頭と晩酌をする機会が何回かあった。
ホンゴウさんには勿論内緒。
呑む場所は決まって狭い私の部屋。
今日も私の部屋のベットに腰掛けて間にテーブルを置く。
部屋に隠してあるお猪口を出して透明なお酒を注いだ。
「乾杯」
シャン「乾杯」
小さくお猪口同士がぶつかる音がする。
1口飲むと喉が熱くなるが気にせずに2口目を飲む。
丸窓から入ってくる波風が心地良い。
シャン「思い出したか」
「あぁ‥‥人間屋の事ですか」
首を撫でられる感触。
そこに付いていた首輪も足に付いていた鎖も今は無い。
だけど、たまにまだ付いているんじゃないかと思う時もある。
「物心ついてすぐだったのでやっぱり記憶には濃く染みついていますね」
人攫い屋と人間屋の男達。
私の中に流れる血にしか興味が無い貴族達。
毎日、鳴り響くオークションハンマーの音に耳を塞いでいた。
シャン「そうか」
首に触れていた手は肩に触れ、そのままお頭にもたれる様に寄せられる。
触れている場所が温かい。
「お頭」
シャン「ん」
「ありがとうございます」
私をこの素敵な冒険に連れて行ってくれて。
返事の代わりにお頭の頭が私の頭にコツンと触れる。
「重いです」
シャン「最近ウタばっかでかまってやれなかったからな」
「別にかまってとは言ってないです」
お猪口に残ったお酒を飲み干す。
シャン「顔が言ってたぞ」
「言ってないです」
シャン「言って‥‥た…A！！！」
本来ならお頭の声が大きく聞こえるはずだった。
それを遥かに上回る爆発音と閃光が襲い、体に物凄い衝撃をくらい意識が飛んだ。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2022年9月17日 23時
