〜36話〜 ページ37
腕に食い込む歯。
じんわりと血が滲み出すが今は、かまっている暇は無い。
ホン「暴れると思うが押さえてくれ」
「はい！」
お頭の体を抱きしめる。
治療が始まると腕を噛んでいたお頭の歯は、私の肩を噛む。
「ッ！‥‥大丈夫ですよ」
額から流れ出す汗が目に染みる。
鋏が銀色のトレーに置かれるのとホンゴウさんの溜息が背後から聞こえた。
ホン「終わったぞ」
その声に全身の力が抜け、床に座り込んでしまう。
自然と涙が零れ落ち、頬を伝う。
ホン「よく頑張った」
頭の上に乗る手が温かくて涙が止まらない。
「お頭ァ」
ホンゴウさんに抱きつくと背中に回された手が優しく撫でてくれる。
緊張の糸が解けたせいか私の意識は闇の中に落ちた。
何処かの扉の閉まる音に目が覚めた。
痛む腕を天井に向けて上げると包帯が巻いてある。
その包帯で、昨日お頭が左腕を失った事を思い出し急いで部屋を飛び出した。
「「お、おい！A！？」」
「「あぶねェから走るなよ！」」
「ごめんなさい！」
狭い廊下を歩く船員の間をすり抜けて、医務室の扉を蹴って開けた。
シャン「A どうしたそんな慌てて」
ホンゴウさんがフォークで刺した林檎をお頭にあげている所だった。
「あ、いや‥‥失礼しまし…た」
部屋を出て行こうとすると、腕を掴まれた。
ホン「俺 仕事あっからこれお頭にあげてくれ」
フォークとお皿に盛られた兎の形をした林檎。
「ちょっと！」
扉が閉まる。
ゆっくりとベットの上にいるお頭の方を振り返った。
椅子に座って、フォークで林檎を刺す。
シャン「よく分かったな」
「私の耳なめないで下さい」
シャン「そうだったな」
結ばれている左腕のシャツが視界に入る。
神様、どうして私じゃなくてお頭何でしょうか。
お頭は悪い事なんてしてないのに。
どうして。
そんな事が頭に次々と浮かんでは消えていく。
フォークを掴んでいる手が震えてしまうと、そこに大きな手が重なる。
シャン「泣くなよ」
「泣いてません」
刺さっている林檎を1口で頬張る。
シャン「あ」
「私がお頭の左腕になりますから！」
フォークを握り締めてお頭の目を見て強く言い放った。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2022年9月17日 23時
