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私の隣に腰を掛けた。
杏寿郎>体が冷える 中に入ろう
A>月を見ていたのです
空に浮かぶ月。
ちらつく星たちと薄い流れ行く雲。
静かに肩に掛けられる羽織。
杏寿郎>母上が亡くなってすぐどうしてここを出て行ったんだ
A>瑠火さんから貴方方兄弟の事を頼まれていましたが私は…家族が分かりません
家族の愛を知る前に家族はこの世から去ってしまった。
杏寿郎>そうか
A>うん だから杏寿郎はあの様な女性と恋仲になり祝言を挙げたらいいのです
空いていた右手を掴まれる。
杏寿郎>俺はAと祝言を挙げたいと思っている 家族になりたいと
太陽な温かい目がこちらを真剣に見つめてくれている。
A>杏寿郎は私の返事を断ったじゃない
杏寿郎>傷つけてしまったと思って頭を冷やしに行っていたんだ
A>だからって
杏寿郎>悪かったと思っている!
耳を劈く様な大声。
A>わっ!うん 分かったから静かに
杏寿郎>それでだな…
耳まで真っ赤の杏寿郎。
杏寿郎>好きなんだ 幼かった頃から 最近それが恋だと知った
一言一言紡ぎだされる言葉。
A>私は7つも貴方と歳の差があるけど それでも私がいい?
杏寿郎>あぁ!
我慢出来なかったのか大きな胸に抱きしめられる。
聞こえて来る心音が早いが落ち着く。
A>杏寿郎
体を離し自分から口付けをすると横抱きにされ部屋の中に連れて行かれる。
杏寿郎>肩の怪我は
A>すっかりと完治しています
浴衣をずらされ傷口を見られる。
傷跡がくっきりと今でも残っている。
そこに杏寿郎さんが口付けを落とす。
杏寿郎>本当に生きているのが不思議なぐらい冷たい だが心は温かい
A>それを知っているのは杏寿郎だけだよ
それが合図になったのか分からないがあの時とは違う口吸いが降って来る。
鼻に触れる髪がくすぐったくて目が覚めた。
顔を上に向けると眼帯が外れている杏寿郎さんの顔があった。
整った顔を触ると大きな目が開きふんわりと笑う。
貴方が私の事を花が咲いたかの様な笑顔と言って下さいますがそれは貴方様の方がよく似合う言葉だと私は思いますよ。
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作者名:アルマジロ | 作成日時:2020年11月1日 23時