-Kenta Ichikawa- ページ7
久しぶりのデートなのに不意に盗み見た時にしている表情は暗い。
私も寂しい。
でも、いつも一緒にいた健太くんのほうが何倍も寂しいよね。
練習の時も休みの時も。
つい繋がれた手に力が入ってしまう。
市川「Aちゃん？」
「ケーキ、食べたいなって」
バレそうな嘘をつく。
市川「気使わなくていいよ」
「顔に出てた？」
市川「ううん。今日、なんだかいつもと違ってたから」
「ごめん」
市川「謝らないでよー。俺が怒ってみたいに思われちゃう」
そうやって笑かしてくるところほんと素敵な人だなっていつも思う。
市川「俺は正式に発表がある数日前に聞かされてたから今はちょっとだけ寂しいだけだよ」
私の顔を覗くように話しかけてくれていた健太くんが前を向く。
市川「またねって約束したから」
2人には2人だけの絆があって分かり合えることもあるんだよね。
だから私が何かを言うのは辞めよう。
市川「まさかAちゃんも寂しいとか思ってるの？」
「そりゃ思うよ。一緒にご飯行ったりした仲だしさ」
健太くんが驚いた表情をする。
「私に情が無いとでも？」
市川「無いと思ってました」
「酷い！」
繋いでた手を離して健太くんの横腹を突く。
市川「痛っ！痛いって！」
「私にちゃんと人の心があるって一番知ってるくせに」
市川「わざと言ったの！わ・ざ・と！」
そう言われても突くのは辞めない。
市川「もーAちゃん」
「健太くんが悪いんだよ」
市川「ありがとうね」
「急にお礼なんて言ってどうしたの？」
市川「気にかけてくれてたんでしょー」
「だって健太くんが暗い顔してるから」
市川「してた？」
「してたよ」
市川「あー多分それこの後何処に行こうか真剣に悩んでた時かも」
「行きたい所あった？」
市川「うんと甘いケーキ食べたいな」
「今日だけね」
市川「そう、今日だけ」
離されてた手はお互いに自然と再び繋ぎ合う。
1歩前を歩いて健太くんを引っ張る。
倭くんの穴は私じゃ埋められないけど私だけに出来ることで健太くんを支えよう。
また来シーズンも一緒に戦おうね。
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作者名：アルマジロ
| 作成日時：2024年3月21日 11時
