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7話 ページ8

「君たちが人質になったのには理由がある」

教卓に両手をついて先生は教室中を見渡す
海の底のように静まり返った教室にチャイムが鳴り響いた
どこか場違いに感じられる

「はい、きりーつ」

先生に促されても生徒達は下を向いたまま
一向に立ち上がろうとしない
次に何があるのか、計り知れない恐怖の中で
息をするのも辛い状況だろう

___私は全く違う状況だが

「起立だよ、きーりーつ」

なかなか立ち上がらない皆を見渡しながら、先生は静かに腕を捲る
教卓の前に座る男子が立ち上がったのを機に皆一斉に立ち上がる

廊下の方から流れてくる仄かな甘い匂い
ニトログリセリンの匂い
次に先生に刃向かったらどうなるか、皆身をもって知っているのだ

「俺の授業を始める。礼」

2回目の先生の号令に、皆渋々頭を下げる
頭を下げる というよりは、俯く というほうが正しいが



「はい、どうして自分達は人質になったのか、わかる人ー!」

先生の明るい声が響くが、誰も答えようとしない
否、答えられない
本当にわからないからだ
先生をしっかりと見据えながら、思案を巡らせる

それにしてもコロコロと表情がよく変わる人だ
役者とも違う、まるで、道化師のようだ

「じゃあ……宇佐美」

誰も答えようとしないので先生は偶然目に止まったであろう宇佐美さんを指す
当たった張本人は先生を睨みあげながら高圧的な態度を取った

「分かるはずだ…よく考えろ」

何かしらの答えを言わないと逃れられない……
その空気感を感じ取ったのか、宇佐美さんは渋々口を開く

「……皆がぶっきーに辛く当たるから」

「ははっ、確かに教師に対するリスペクトはゼロだよな」

先生は小さく笑ってから、違うと首を横に振る
そりゃそうだろう
そんなことでこの道化師が、こんなスペクタクルなことをするはずがない

「ヒントは、他のクラスにはなかったことだ」

露骨な先生いじりも他のクラスにはないような気はするが…

「じゃあ、諏訪」

「…警察沙汰になった奴がいる」

「テメェ喧嘩売ってんのか」

次に指名された諏訪さんの答えは割と即答だった
しかし甲斐君の機嫌を損ねるには十分すぎたようで、彼は勢いよく立ち上がる
先生が近くにいる以上、流石の彼も下手に出れないようで、諏訪さんの態度はそのままだ

「甲斐が傷害事件を起こしたこともあったなぁ
でもそれは理由じゃない」

先生は軽く笑うと、ある席へ向かう





もう二度と


誰も座らない






私の親友の席

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設定タグ:3年A組 , 夢小説 , 柊一颯   
作品ジャンル:その他
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理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています!応援してます!! (2022年8月23日 17時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね!まさかの共犯になるなんて…!面白いです!更新待ってます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね! (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みズま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年1月14日 19時

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