27話 ページ29
親指付近にある電源を入れる。
バチッという大きな音と共に茅野さんのすぐ横で電撃が走った。
「どうして、そんなもの…」
「ハンディタイプって持ち運びしやすいのよ。護身用にね」
茅野さんも分かったらしい。
私が今手に持っているもの・・・それはスタンガンだ。
「ねぇ、茅野さん。バレたら色々面倒なの。
馬鹿な
昨日アンタが見たこと話したりでもしたら絶対勘違いする。
太河Aは柊とグルだーなんて騒がれたりしたら処理が大変だわ」
棒立ちになっている茅野さんの顔にスタンガンを近づける。
「だから本当は、今ここで殺 さないといけないのよ」
スイッチに指をかける。
ふるふると弱弱しく首を振る茅野さんは、どこか滑稽だった。
そうよね、そうよね、怖いわよね・・・！！！
「・・・まぁ黙っててくれるって言うんだったら、殺 しはしないであげるけど」
どうする？と顔を覗き込む。
涙にぬれた黒目が、私の目を見て不安げに震えた。
首がゆっくりと上下に動く。
「黙っててくれる？」
もう一度、茅野さんはゆっくり頷く。
「そう！嬉しいわ。よかった、物わかりのいい子で。」
これが諏訪さんとかだったら厄介だった。
彼女はなかなかに賢い子だ。
それに、感情を隠すのが上手い。
死の恐怖を眼前に突き付けられても、あの手この手で翻すだろう。
感情の読みやすい人間は、利用しやすいのだ。
「じゃあ、もう二度と私について詮索してこないでね」
トイレを出ても、茅野さんはついてこなかった。
そのまま教室に戻り、重苦しい空気の中で食べかけのパンを飲み込む。
昨日は失念していた。
あの時の私は目の前の敵に恐怖し、興奮するばかりで
自分の目的はおろか、状況まで見失っていた。
よく考えたら、あれだけの騒ぎで人が起きてこない方がおかしい。
『だったら話せ！！！』
『いつか、話してくれ・・・』
首を振る。脳裏によみがえるのは柊の顔。
情けなく泣いていた、ボロボロの顔。
――信じちゃ、ダメよ。
頬を叩き、自分を奮い立たせる。
――
――私の計画を邪魔する、”敵”だ。
筆箱から一枚の写真を取り出す。
そこには親友の澪奈。私がかつて受賞した賞状を頭の上に掲げて、自慢げに笑っている。
まさかそれが最後の写真になるなんて、この時は思ってもいなかった。
――上手くやってみせるからね、澪奈
ゆっくりと写真を撫でる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 656人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
理音(プロフ) - 続き気になります！更新楽しみにしています！応援してます！！ (2022年8月23日 17時) (
レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか？すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね！まさかの共犯になるなんて…！面白いです！更新待ってます！ (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね！ (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
