検索窓
今日:8 hit、昨日:10 hit、合計:248,422 hit

2話 ページ3

教室に入った途端、一気に空気が凍った。
シン…と静まり返る教室、その中を私は気にせず歩いていく。
と、居心地悪そうにしている隣の茅野さんと目が合った。
会釈をするも、すぐに目を逸らされる。

「また学校来たのかよ。」

「もう来なくても良かったんですけどー」

「不登校になったのかと思ってたわ」

教室の後ろの方で、小さな声。
振り返らなくても誰かは分かる。
びしょ濡れの上履きも、
落書きされた机も…。
それでも無視していると、クラスメイト達は何事もなかったかのように喋りだした。
さっきまで居心地悪そうだった茅野さんも、ほっとしたように小説を読み進めている。

「ねぇ、Aー。ジュース買ってきてよ」

後ろの席から投げかけられる声に、私は無視を決め込んだ。
宇佐美さん達が何やらうるさく喚いているが、特に気にしない。
一向に相手にしない私を見て、宇佐美さん達は諦めたようだ。
各々が財布を手にし、教室後方のドアへと向かう。

「あれ?」
「なにこれ、開かないんだけど。」
「ちょっと誰かー、後ろのドア壊したでしょー」

どうやら後ろのドアが開かないようだ。
卒業間際に教室の部品を壊したら、即刻弁償だろう。
もしかしたら卒業できなくなるかもしれない。
皆それは嫌なのか、ドッと後ろのドアの方に集まる。

「HR始めるよー」

そこへ、いつもの調子で先生が入ってきた。
茅野さんが慌てて立ち上がり、優等生よろしく後ろのドアの事を先生に伝える。
先生は茅野さんの顔と、ドアに群がる生徒たちを一瞥してから、とりあえず席に着こうか、と促した。

「あれ、甲斐君たちは?」

教卓についてから先生は、未だ空席の三つの席を見つめる。
それが合図だとでも言うかのように、前方のドアが開いた。

「間に合った、間に合った〜」

「間に合ってない、遅刻だよ。」

やんわりと先生が指摘するも、三人は反省の色も見せない。
それどころか先生を突き飛ばした。
廊下へ倒れこむようになった先生は、ドアを支えにして立ち上がる。

「鍵…?」

いつものようにドアを閉めた先生。
しかしその手つきは、 いつも とは違っていた。
カチャリと小さな音を立てて閉まったドア。
明らかに、鍵がかけられている。
いつもはそんなことしない。というより、する意味がない。

私の呟きが聞こえたのか、先生は私の方を見た。
そして、一瞬

ほんの一瞬だけ、





ニィッと、笑った。

3話→←1話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (233 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
656人がお気に入り
設定タグ:3年A組 , 夢小説 , 柊一颯   
作品ジャンル:その他
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

理音(プロフ) - 続き気になります!更新楽しみにしています!応援してます!! (2022年8月23日 17時) (レス) id: d2e2ccbd11 (このIDを非表示/違反報告)
葉紅(プロフ) - もう更新しないんでしょうか?すごく面白いので続きが見たいです。続編と物語の更新楽しみにして待っています (2020年9月27日 0時) (レス) id: 915a610475 (このIDを非表示/違反報告)
蒼炎 - ヤバイですね!まさかの共犯になるなんて…!面白いです!更新待ってます! (2020年1月24日 23時) (レス) id: 874e279780 (このIDを非表示/違反報告)
ちーかま - すっご.....。作者様、絶対頭良いやん.....。 (2019年3月16日 10時) (レス) id: 8f9925b559 (このIDを非表示/違反報告)
ナナたん - 超大作ですね! (2019年3月15日 20時) (レス) id: 0ab40017a4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:みズま | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年1月14日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。