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「返事してやー」
「うわっ」
いきなり頬を軽くつねられる。
冷たい手から香るバニラは、クズが愛用している香水。自分の誕生日プレゼントと称して勝手に私の部屋から持っていったものだ。しかも使いかけ。
欲しかったなら新品あげたのに。
「なに？どうかした？」
「せっかく二人でおるのに反応してくれんのやもん」
酷いやん、とだらしなく笑う。
「何考えてたん?」
「鬱のこと」
「えー？俺？」
さっきから全然進んでないじゃん。いや、お互い様やろ？といつもと変わらない会話をする。
テスト勉強をしたい、と毎度私に部屋に上がり込んできては、いつもこんな感じだ。
私は目の前にこいつがいるからどうしようもないし、こいつは……何考えてるかわかんないけど、大体ろくなことじゃないから。
わざわざいつも横に座っている。机を広く使えばいいのに、今日もそうだ。私が反対側に座ろうものならちょっかいをかけに、こいつもまた横に来る。
そうやって機嫌が良くなるんだ。
今も何故かごきげんなこいつは、すらすらと数学の問題を説いていく。勉強会なんて必要ないくらいできるじゃない。
……それに、私の恋はきっと報われない。
クズがクズたる所以、かなりのプレイボーイ。私は眼中にないらしいから。
「何見てんのー？」
眼鏡の底で濁っている紺と視線が交わる。
新月の夜空を映した水を、どろどろに煮込んで煮詰めたその熱のように。
それはカラメルのように苦くて、深い深い海の底の水で藻掻くような苦しさ。
鼻先で甘いバニラの香りがはじけた。
「っは、」
「何緊張してんの？」
やっと、意識してくれたん？
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両片思いut(ヤンデレ)×鈍感夢主
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作者名：mituba | 作成日時：2023年10月16日 15時
