虚構に聳える摩天楼【d! 短編集】 (ページ17)

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不安を真綿で包み合ってページ17

猿に鉄拳くらって、嫌々授業に出た。

教科書なんか持ってない俺に、隣の女が教科書を見せてきた。
それだけじゃない、ついていけない俺に丁寧に教えてくれる。

なんやおせっかいやな、と思ったけど優しそうで、なんかちょっと弱そうな印象を受けた。
不良の俺にも優しい、偏見のない女。こんなやつ、おるんや。俺が怖くないんか。

ちょっとだけ、驚いた。

次の日、あの女が気になって授業に出ることにした。猿にちょっとビックリされた。

教室に入って、横の席のあいつ……の周りに集まってる数人のケバイ女たち。
香水臭くてうるさくて、音を立てて席に座ればすぐにはけていった。
普通はこうなんだ。こうやって、怖がって遠ざかっていく。

「おはよう」と言った横の席のこいつ以外。

次の日、教室のドアを開けようとすると激しい水の音が聞こえた。

ドアを開けるとずぶ濡れのあいつと、昨日のケバイ女の筆頭みたいなやつ。
床に転がるバケツとみずたまり……イジメだ。

今すぐにでもケバイ女どもを殴りたい衝動に駆られるが、グルッペンに一般人、特に女には手を出すなって言われてるから、どうしようもない。

立ちすくむあいつの手を引いて教室を出る。
そのまま保健室に。
風邪をひいてしまわないかが心配だった。
だんだん握った手が冷たくなっていくのが分かったから、とりあえず来ていたパーカーをかぶせて。あいつは戸惑って、少ししてから申し訳なさそうにフードを目深にかぶった。

保健室に連れてくと、先生……ぺ神に珍しいといわれた。うっさいわ、そんなこと言わんでええねん。

結果、あいつは早退。
あいつがおらんなら授業なんて出る意味ないし、たまり場に行った。

なぜか知ってる妖怪ネタこすりから「いつものパーカーどうしたんですかぁ？」っていじられた。
おまえらもうっさいわ。

次の日、あいつはいなかった。多分風邪。
あいつがいないこととその原因に腹が立って、でも殴れへんから、一発机蹴っといた。