まiしろ 2 ページ29
少女はにこりと微笑むとこちらに手を差し出して来る。
もしこれが昼間の人通りの多い道端だったら、私は絶対にその手を取らなかったと思う
少女はそのくらい奇妙な格好をしているのだが
今自分が直面している非現実的な状況と、なんだか妙にマッチしていて
私は少女の手を掴んだ
瞬間、足首を掴む力がふわりと消える
いきなり力を抜かれたせいで前に倒れ込んでしまった
少女はおっと、と言いながら私の肩を支えてくれる
危ない、このまま行ったら川辺の岩と頭がごっつんこするところだった……
「あはは、お姉さんふらふらじゃん」
……この少女にはさっきのあれが見えてたのかな
驚くほどあっけらかんとした態度に疑問を持ちつつも、私は少女の肩を借りながらベンチに座らせてもらった
私の記憶ではこの辺りにベンチはなかったはずだけど
ちらりとあたりを見回すと先程までの景色はどこにもなく、住宅街にも灯りが点々とついているみたい
あぁ、私、抜け出せたんだ
体の力はもう抜けているのに、心理的なものかな、張り詰めていたものが切れた感じがしてほっと胸を撫で下ろす
私がそんなことをしている間に少女は近くの自動販売機で小さいサイズの水を買うと、これ飲んで落ち着いて、と私に手渡し隣に座った。
水を飲み息を吐く
少し経つと私は少女に対して、めっちゃ美人だなぁ、正直惚れそう、家に連れて帰りてぇ、なんて冗談めいたことを考えられるくらいには頭が回るようになってきた
「じゃ、もう僕行くけど。ちゃんと1人で家帰れる?」
こっちが落ち着いたのを感じ取ったのか、少女はすくっと立ち上がってこちらを振り返る
そういえば、ここどこだろ
慌てて携帯を開くと、歩いてきた長さに見合わないくらい会社から近い位置に現在位置が示されていた
ほっとしたのも束の間、左上に表示される時間を見て私は驚愕する
夜中の1時
わずかな期待を込めて乗り換え案内を開くが、終電の時間はとっくに過ぎていた、当たり前だ
「もしかして、帰りの手段なくなっちゃった感じ?」
わたわたと慌てる私を見てくすくすと笑う。
タ、タクシーで帰るしかない……?でも財布の中、もうすっからかんじゃなかったっけ
慌てる私を楽しそうに眺めている少女は、私としっかり目を合わせながら口を開いた
「じゃあさ」
「お姉さん、家に来なよ」
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水桜時 - リクエスト失礼します。卯月コウでお願いしてもいいですか?(できれば学パロで放課後遊びに行く〜みたいな感じで) (2023年4月14日 18時) (レス) id: 9943baf392 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - たまさん» まさか世界平和が訪れていたとは((感想本当にありがとう御座います!めちゃくちゃ励みになります、、! (2021年9月12日 20時) (レス) id: b7184e5adb (このIDを非表示/違反報告)
たま - めっちゃ助かりました。ありがとうございます。最近の荒んでいた心が落ち着いて地は浄化され、川はせせらぎ、風が爽やかに吹き、地球が救われました (2021年9月12日 13時) (レス) id: ba3a5d47c2 (このIDを非表示/違反報告)
カルタ(プロフ) - めっちゃ面白いですね!でもかなかなとガッくんが怖すぎてカッコいいどころじゃなかった……ww (2021年8月19日 17時) (レス) id: a23bff774f (このIDを非表示/違反報告)
景璃(プロフ) - ししゃもさん» ありがとうございます!これからも頑張ってください!待ってます! (2021年8月15日 1時) (レス) id: 4f4ca6d63e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ししゃも | 作成日時:2021年8月4日 22時