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しまった、このままではまた不破先輩のペースに呑まれてしまう
もう不破先輩の言葉が聞こえないように、私は人混みの中を早足でかき分ける
ようやく雑踏を抜けた先には階段があった
上の階は出し物をする教室はない為誰も登っていない
人のいないところに行っても宣伝はできないだろう
でも、引き返せば不破先輩と鉢合わせるかもしれない
それだけは気まずいので嫌だ
、、登るしかないか
他の階段から降りよう、そう思って階段の一段目に足を乗せる
が、人混みでもみくちゃにされた私の服の袖は緩んでしまっていて、1番最悪のタイミングではらりと解けた
引きずるほどの長い袖はちょうど私の足元に落ちる
気づいた時にはもう遅い
袖を踏んだまま足に力を込めた私の体は服に引っ張られ、ずるりと後ろに倒れる
あ、これは確実に頭からいく
両手が看板で塞がっている私はそう悟った
この後くるであろう衝撃に備えようと、固く目を瞑ったその時
ぱし、と肩を支えられた
見知った感覚
いつも私のことを抱きしめて、髪の毛をぐしゃぐしゃにして
_____でも、私が辛い時には優しく背中をさすってくれる
憎らしいけど、大好きなその手
悔しいな、わかっちゃうのが
「…不破先輩」
「お、正解。もしかして超能力持ち?」
なんて茶化してくるけど、それに怒れる余裕なんてもうなくて
どっと溢れた安心感から先輩の袖をぎゅっと掴む
「…怖かったね」
怯えた顔を見られたくなくて俯いた私の頭を、今度はセットを崩さないように、いう配慮からか、さらさらと優しく撫でた
「すみません、もう大丈夫です」
どうしてだろう、いつもならこんなちびっこ扱いが大嫌いなはずだったのに
なんだか少し物足りないような、もっとやって欲しいような
初めての気持ちに訳がわからずぽかんとしていると、どっか打った?大丈夫?と顔を覗き込まれる
ただうざいと思っていた頃とは違う
元から整っているとは思っていた先輩の顔立ちだが、いまはなんだか一層きらきらと輝いているように見えて
「なっ、なんでもないです!本当に大丈夫なんで、ありがとうございました!!」
ぼふんと湯気が立ちそうなほどに顔に熱が集まるのを感じた私は、その場を脱兎の如く逃げ出した
まさか私、不破先輩のこと…?
気づいてしまったこの気持ちは、勘違いで済ませるにはもう手遅れで
あぁ、明日から先輩とどう接せば良いのだろう…
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作者名:ししゃも | 作成日時:2021年11月23日 0時