【d!】忘失 (ページ6)

今日:7 hit、昨日:2 hit、合計:33,546 hit

5話ページ6

.

この門をくぐるのは、学校見学以来だろうか。

先輩ら、あんなんでも頭だけはええからな。

俺も頑張らなここ入れるか微妙やったわ……
チーノも必死こいて勉強してたらしい。

静かな中庭を歩く。

早めに来たからか、人っ子一人おらんくて、こうも人の声がないと不気味やな、と思ったり。

本当はこの時間には在校生(先輩らは除く)すら来てへんから人いなくて当たり前なんやけど。

入学式は9時から。今の時間は8時。

そりゃ人おらんやろ。

先生はおるかもしれんけど。

受付とかどうするのかって？

そりゃ1回外出て並ぶよね。

早めに受付行って早めに生徒会室戻る予定やから。

……さて、ここやったっけ？下駄箱。

ここの下駄箱は扉付きらしい。ロッカーみたいなの。

あれや、少女漫画とかだと主人公んとこにラブレター入ってるやつや。知らんけど。

しょうもないことを考えてると、ふとあることに気づく。

…………俺、何組？？

当たりを見渡すと、昇降口の外にデカデカとクラス表が貼ってあった。

俺の名前を探しつつ、チーノの名前も探してみる。

｢……4組か｣

ここの学年はどうやら8クラスらしい。

俺は4組で、チーノは3組。合同で授業あるんやったら関われそうやな。

下駄箱の方へ戻り、自分の番号の靴箱を開ける。

上靴に履き替えようとしたところで、後ろから視線を感じた。

先生か？

振り返ると、黒髪を綺麗に束ねている女が立っていた。

どこか知っているような顔立ち。でも俺はこんな奴知らんはず。

視線が合うと、彼女は少し驚いたような顔をする。

また、胸が締め付けられるような感覚。

雪を見てる時と同じ。

この女を知れば、俺が、俺が忘れてるであろう何かも、分かる……？？

いや、そんなわけないやろ。

そんな簡単なことで解決するんやったら苦労せんわ。

一気に気持ちが冷めた俺は、取り出した上靴を履いて、生徒会室へ向かった。

………………場所知らんけど、適当にフラフラしてればいつか着くやろ。多分。