僕の妹を簡単にあげることは出来ないよ.1 (ページ16)

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「次はナナリー、前に出てきて」

　ついにナナリーの番になった。

　だけどあまり動こうとしない。それもそうだ。

　だってあんな龍みたいなものを出されたあとにやるなんて、負けん気の強いナナリーじゃなくても気が失せる。

「おいナナリー、突っ立ってないで降りてこーい」

「……はい」

「ナナリーどうした？具合でも悪いのか？」

「いえ」

　いつまでも席から動かないナナリーを、先生が再度呼んだ。

　アルウェス・ロックマンがナナリーとすれ違い様に余計なことを言ったのだろう、

「よ、余計なお世話だボンボンがァァ！！」

　と叫びながら走って階段を降りていった。

　原因のやつを思わずジト目で見てしまう。

「じゃあナナリー、利き手を」

「はい！」

ナナリーが意気揚々と利き手を伸ばした。

　やる前にヒソヒソと庶民の～だか、どうせショボい～、とかうっすら聞こえてきたけど、先生が喋ってた生徒にチョークを豪速で投げつけていた。グッジョブ先生。(学校内での先生の権力は強い)

「セーメイオン(印の華)」

　ナナリーがそう唱えても、特に何も起こらなかった。

　･･･周囲には。

　ナナリーの髪と目の色が変わっていった。

　焦げ茶色の髪は澄んだ大空のような水色に。

　黒い瞳は僕と同じ碧色に。

　だけど自分の色の変化なんて分かるわけがないから、ナナリーは混乱していた。

『ナナリー！髪！髪の色が変わってる！』

　僕は思わず叫んでそう伝えた。

「まぁ、魔力ってのは自分達の血に宿っているからな。たまにこうして髪色が変わったりするやつがいる」

　先生はお気楽に言う。

「なんで！？」

　ナナリーが叫んだけど叫ばない方がおかしい。

　人指し指と親指で髪を摘まんで、目の先に持ってきている。

「さっきも言ったが、本当に稀にあるんだよ」

「わ、分かってますけど」

　たまにいるって、過去他にもいたんだ。

　

「ちょっ、でも先生！これ治らないんですか！」

「色を変える魔法で髪を染めないとなんとも。魔法が覚醒したのと一緒だからな。今更元には戻せない。嫌か？水色。綺麗だからいいじゃないか」

　急に、教室の温度が冷たくなった。

「なに……？」

　キラキラと真白い光が教室中に落ちてきた。皆は上を向いて、なんだなんだ、と手を伸ばす。

　僕が伸ばした手のひらの上には、その中の一つが落ちてきた。

　
　･･･雪の、結晶？

「これって雪の結晶？綺麗」

　誰かがそう呟いた。

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