一夜目 ページ3
真夜中のベルリンはまだ肌寒かった
俺は上司にいきなり呼ばれ、わざわざ上司の所まで行ってきた
これから、自分の家に帰る
ベルリン市内はもう誰もかも寝静まっており、光がついている家ももう殆どない
貧富の差もなさそうな街の住民を見ていると、何が正しいのかがわからなくなる
俺の目に映る光景は、静まり返ったベルリン市内と目の前の大きな壁
「お兄さん、お兄さん。ちょっと私と遊んでいかない?」
そこでキャキャキャと笑う、少女の声
その壁に上っていた少女は、壁に座り、こちらを見下ろす
「…なんだよ。」
弟似の青く澄んだ目をにらみつける
彼女はそんな俺を面白がって見つめる
「いや、こんな夜道に珍しいな…と思いまして。安心して。別に娼婦じゃないから。ちょっとしたゲームでもしない?お兄さん。」
そう言って彼女は壁から飛び降りる
俺より少し下ぐらいの身長の少女で、髪は短い
だが、月明かりに照らされ銀髪が美しく見える
昔、弟に髪が綺麗だ、と言われた事があるがその時の弟の心情はこうだったのだろうと思った
「…で、お兄さん。何がしたい?」
「何がしたいって…考えてなかったのかよ。」
「そーよ。できたてほやほやのベルリンの壁でできるゲームなんてそうそう限られてるし、つか今私の持ってるゲームは全て家の中でやるものですー。」
「何かウザいぞお前…って、拒否権なしかよ。」
「まあ、いっか。お兄さんのお家案内してよお兄さんー。そこでゲームしましょう。」
そう彼女は俺の手をひき、走り出す
家なんて知らない癖に
生意気だな、と思うが彼女の顔は何だか嬉しそうだった
「そーいや、お兄さんの名前聞いてなかったな。アレでしょ?私お父さんに教えてもらったから。
えーと、うーんと…プロイセンだっけ?」
彼女は名案を思い付いた様に、声を上げた
心底嬉しそうな顔だ
「ああ、あってる。じゃあ、お前の名前は?」
それを聞くと、彼女はいたずらをする様な笑顔に変わった
「お兄さんと一緒の存在。貴方が憎む壁。守るべき国境の番人。さて、誰でしょう?」
彼女は急に走り出した為に、顔は見えない
だが、その言葉に心当たり
「……もしかして、お前、ベルリンの壁か?」
俺が恐る恐る聞くと、彼女はこっちを向いて
「うん。私は、ベルリンの壁。」
そう綺麗にほほ笑んだ
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