少しだけの伝言に願いを【APH】【東西組】 (ページ14)

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十二夜目ページ14

…私は何をしたいんだろう。

プロイセンとドイツに同情した？ううん、そんなことない。

私は私。ベルリンの壁。

冷たく冷酷で東と西を隔てる最終地点。

嗚呼、でもなんで？

私がもう一度Aと言う名前で呼ばれたがっている。

だから今夜も踊るの。

可哀そうな兄弟を

慰めるようなしぐさで。

彼らにいつか平穏が訪れ、未来永劫安定した国になれるように。

私は、悪役を演じ続ける。

＿＿＿

「…ねぇ、知りたいの？ドイツ。」

「…」

彼女がにこりと笑う。

その目が俺を刺す様で、見透かされた気分だった。

「…わかるよ、その気持ち。」

お兄さんが心配だもんね？と笑う姿は悪魔のようで。

兄さんや他の戦友が連れていかれたあの悪夢のような日を今ここで味わっているような感覚にも陥った。

「でもやっぱりダメ？東側の壁の話は信用できない？」

「いや…教えてくれ。…兄さんのことを。」

久々に人前で兄さんと呼んだ気がする。戦争中もずっと兄貴ばかりだったせいか、兄さんと言う言葉が重くなって俺に降り注ぐ。

「…『親愛なる弟へ。』」

彼女は手紙をポケットから取り出し、俺の前で読み上げた。

「『元気にしているか？俺は今日も東でかっこよすぎるオーラを放っているぜ！こっちにはハンガリーもいるし、バルトの奴らもいるから毎日が幸せだ。ただ、お前の作るクーヘンが食えなくなるのは少し惜しいけどな！それと、今度からこいつが俺たちの手紙を運んでくれるらしい。だからもう俺様に会えなくて寂しい思いはすんなよ！俺様が週１の頻度でかっこよすぎる手紙を送ってやるぜ！あと。もう戦争なんて終わったんだからお前はもう、泣くな。じゃあな！かっこよすぎるお前の兄貴より。』以上。」

ぶっきらぼうにそう言った彼女は、俺に手紙を渡した。

何年かぶりに見る兄さんの字。妙に綺麗な字を見ると思い出が浮かび上がる。

兄さんの日記をたまに盗み見してしまった時、兄さんが几帳面に書き留めていた日記の字の綺麗さに驚いたことが一度あった。

「…それじゃあ。渡すもの渡したし、私はもう行くね。ばいばい。」

そう言って走り去ろうとする彼女。

「待ってくれ。俺が手紙を書いてもいいのか？」

俺の声に驚いたのか立ち止まり、少しずつこちらへ近づいていく。

そうして、人差し指を口元に近づけこう言った。

「プロイセンの弟サービスだからね？」

自慢げに、悪女のような彼女は

月に照らされ、輝いていた。