十一夜目 ページ13
まずい。
「ああ、ライヒ。こんなところで巡り合えるなんて!」
老婆は主人を見つけた犬のような表情で、俺に言葉を投げかける。
あの時の国民にこんなに見つめられている。
「そ、そのことだが…」
「ライヒ、私は信じています。必ずこの国がまた世界を正しい方向に導くことができると…今度こそ英米を倒し、我らがドイツこそが正しいと証明できることを…」
「…やめ…ろ。」
「ライヒもそれをお望みですよね!ライヒ、貴方は私たちの、」
「やめろ!」
つい、叫んでしまった。
なんだか苦しかった。もう俺はあの時のような期待は背負うことができない。
「あの時」は国民にひたすら期待されていた。俺はまだ生きた年数など100年もない。
新しい祖国だと、大切な国だとただただ期待されていた。
その期待に俺は答えられなかった。
勝てば官軍。負ければ賊軍。所詮俺はそんなものなんだ。
結局、負けた俺は兄さんを東に連れていかれてしまい、こんな状況に立たされている。
兄さんだけじゃない。恋人を、家族を、兄弟を、
たまたま住んでいた場所が西か東かだけで隔てられ東の国民には西以上の苦行を強いている。
二度のチャンスもあったのに。
それをすべて俺は無駄にしてしまったのだ。
だから、もう。
「俺に…」
期待をしないでくれ。
頼りにされるのは確かにうれしい。
兄さんやオーストリアや他の兄たちに国になるために受けたレッスンは確かに楽しかったし、過ごした日々もやはり思い出だった。
イタリアや日本。枢軸の奴らと一緒に戦った日々は確かに幸せだったしイタリアは頼りないが心強かった。
ただ。
今の俺は、そのどちらもない。一人だけ。なのかもしれない。
*
気が付けば老婆も子供連れの女性もいなかった。
風がスッと前を通る。
「ねーねー。」
ツン、と手に触れられる。
そこには見慣れた少女が、にこりと笑っていた。
「__壁。」
「やだなぁ、壁なんて言わないでよ。私はAって名前をもらえたんだよ!久しぶりだね。ドイツ。」
少女はベルリンの壁。
壁の守護神的なものでもあるらしい。
「最近、姿を見せていなかったようだが。」
「私、東ドイツに行っていたの。貴方のお兄さんに会いに行っていたのよ!」
目を、見開いた瞬間。
__
お久しぶりです。更新再開します。
2人がお気に入り
「ヘタリア」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ