27、日本人の味噌汁 ページ28
.
カズ「おはようサン(笑)」
「…え?」
そう言ったカズが、私の頭に置いた手を動かした。
…また、泣きそうな顔してる。
.
押された肌は熱い。
息を吐くぐらい簡単に、逆に不自然な程に小さく吐き出された“ごめん”
それが誰に向けての言葉なのか、私には分からない。
すっと離れた手は、所在無さげに宙を彷徨った。
.
「…おはよう」
ソファーに向かう背中を振り返って、慣れない言葉。
立ち止まって見えた横顔は、フっと緩んだ。
.
カズ「で、俺ってその味噌汁飲めんの?」
「ちょっと待ってて」
カズの催促に、溶いておいた卵をﾌﾗｲﾊﾟﾝに流す。
何回か分けて流した卵を奥から巻いてまな板に置いたら、両端を切り落として自分の口に運んだ。
．
「…ん、美味しい」
ふと、味付けはこれでいいのかと気になった。
.
ちょうどカズが伸びをした瞬間で、寝起きの顔と目がﾊﾞｯﾁﾘ合う。
カズ「…ん?何?」
「…何でもない」
.
まぁ、いっか。…また聞けば。
先に作っておいたﾎｳﾚﾝ草とﾆﾝｼﾞﾝのおひたしを盛り付けた。
.
カズ「出来たの?メシ」
頷いてテーブルに置けば、ﾍﾟﾀﾍﾟﾀと裸足のカズが近付いてくる。
.
カズ「おー、スゲーじゃん。
日本の朝食って感じ?」
「魚があれば完璧だけど」
カズ「俺、ﾀﾞﾒにしちゃうだけだしなー…。
あと生物無理だし」
「…ｸﾞﾘﾙで焼けば?」
カズ「……上手く使いこなせる気がしねぇ。(笑)」
.
自嘲気味に笑いながら椅子に座ったカズが手を合わせた。
カズ「いただきます」
.
チラとこっちを見たカズから体を引いて、後ろのｷｯﾁﾝに背中を預ける。
…緊張、してるかも。やっぱり。
.
味噌汁を一口啜ったカズが、深くため息を吐いた。
「…不安になるんだけど。その溜め息」
カズ「あのねー、感嘆の溜め息だっつの!」
「･･･そうなの…?」
カズ「夏でもしみるわ。
やっぱ日本人は味噌汁だな」
.
口を固く結ぶ。
自分の作ったもの褒められるって、こんなに嬉しかったっけ…。
.
お気に入りの歌をハミングしながら、楽しげに調理する後ろ姿。
思い出していると、
.
カズ「…で?
俺ン家の家政婦さんになる覚悟は出来たの？」
聞いた覚えのない発言。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：結衣花 | 作成日時：2013年9月16日 13時
