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≒乱暴 ページ20

ぴんぽーん

「はい」
「齋藤です」

怪訝そうな声が一転、なにかをひっくりかえしたような音がして、騒々しくドアがあいた。


「…なんだ。元気そうじゃん」
「な、なんでいるん!?」
「藤井くんに、お見舞い行けって言われたから」
「…あんにゃろ」

「…とりあえず入れてよ」
「いやや!」
「はぁ?」

何故か強情にいれてくれない重岡。

「そんなに見舞われたくなかったわけ?」
「そうやないけど、今の俺はだめ!」
「知恵熱なんでしょ。うつらないじゃん」
「知恵熱の原因が自分だからだよボケぇ!」

自分。この場合の自分は明らかに私のことをさしてるよな。


重岡は目立つことを悟ったか、玄関までは入れてくれた。

ここまでくるとなんだか意固地になってしまうのが私の性分。


「どうせ昨晩なんかあったんでしょ?私何かした?したなら謝るから教えてよ!」

一歩前に踏み出して睨みつけた――――つもりだったが、


「……っん」


壁に強く押し付けられ、唇を重ねられていた。

掴まれている腕は痛いのに、キスは触れるだけの優しいキス。
それがさらに、混乱に拍車をかける。


「ど、どうして…?」

私とあんたでこんなの、今更すぎるでしょ?

「なんで?」

質問を質問で返される。
でも、重岡が問うたことは違っていた。


「なんで俺を好きにならへんの?」

なんで俺を好きになったらあかんの?


顔をゆがめる重岡を見ているうちに、あの夜の記憶が蘇ってきた。



『そんなにねたいならぁ、いっしょにねればいいじゃん…』

『……らって…す…きになっちゃう…だから…』




「うわ…しにたい…」


自分の醜態とキスの余韻でその場にへたり込んでしまう。

嘘だろ。夢だと言ってよ。今の状況もあの夜のことも。


けれど、お尻から伝わる床の冷たさが無情にも、これが現実だってことを痛いほど伝えていた。
見ないふりしてた重岡への気持ちも。

≒駄々っ子→←≒疑問



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作者名:ひめりんご | 作成日時:2020年4月14日 1時

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