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≒ぜんぶ ページ17

「彼氏、は、いらない」

「そっか」

何を考えているか分からない目で見つめられる。
何を血迷ったか、私は過去をぽつぽつと語った。



「中学の時、好きな人がいて、告白されてお付き合いした。だけど、フラれちゃった。思ってたのと違うって」

「それから何人かと付き合ったけど、全部自分の見得のため、みたいなのでさ」

「俺も、あったわ」

「まだ私は恋愛に対して憧れてたよ。だけど、高校の時できた彼氏に、私のどこが好き?みたいなこと聞いたのよ」

「ぜんぶ♡みたいに返すやつな」

「顔と体、だってさ」

「…」

「そのまま押し倒されてさ、もー全力で逃げてきたよね。ほんと」


重岡が黙り込んでしまったから、あわてて笑う。


「別に、トラウマとかじゃないからね。違うけど、なんかそれから萎えちゃってさ」

「…自分、男運悪すぎちゃう?」

「るっさいなぁ。重岡は彼女とかどうなのよ?」


重岡はなぜか半ギレ気味に答えた。

「欲しいわ!」

「え、欲しいんだ…」


意外だった。
欲しいのか。

「え、なんかショック…」
「なんでや」
「分からないけど…」

勝手に仲間だと思ってたからなのかな。
なんでだろ。

「てか、Aって好きな人とかできないん?」
「できない!」

即答。



「私ばっかりが好きで、相手にとっての私の価値は顔と体だけ。そんな苦しさ、もう経験したくないし。恋愛になるから拗れるんだよ。友だちでいればいいんだよ」

ぜんぶが好き、なんて幻想だ。実際あるのかもしれないけど、私にはありえない。
こんなこじらせためんどくさい女、誰が相手にしてくれるんだろう。


重岡は黙り込んでしまった。

何この空気。


「なんか、ごめん」
「いや、話してくれてありがとな」

そう言って寝てしまった。


なんだよ。
私重岡のことあんまり聞けてないぞ。
彼女欲しいってこと以外は。


というか。



「もしや、私、邪魔なのでは…」


今度から重岡を男除けにするのやめよ。
そう決心する私であった。

胸の奥が痛んだ気がするけど、多分気のせい。

≒ぷっつん→←≒知ってる



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作者名:ひめりんご | 作成日時:2020年4月14日 1時

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