≠友達、あくまでも。 (ページ16)

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≒知ってるページ16

朝から重岡がおかしい。
目の下が真っ黒だけど、なんなんだろう。

「あー昨日はごめんね。社長さんと一緒にお酒飲んでただけなんだけど珍しく酔っちゃって。やっぱお高いお酒は度数もお高かったのかなぁ」

「…だけ、ちゃうやん」

「？」

「なんでもないわ」

奥歯にものが挟まったような言い草。
なんとなくもやもやするけど、昨夜の記憶がない以上大きくは出られない。

「すまん。今度ディナー奢るわ」

ディナーだなんてめったに行かないけど、これは最大限の感謝のしるしです。
もうちょっとやり方はあるのかもしれないけど、私には分からない。

「ありがとうございました」
解散。
昼頃には会社に帰れそう。

「今日は絶対定時に帰るわー」

重岡はずるずると座席にもたれかかった。

「もう疲れたわぁ…もういややわぁ…」

「寝ないの？」
「おん」

疲れたと言っているのに。
天邪鬼なやつだ。

でも、こいつはそういうやつだって知っている。
何もないときはわーわー言うくせに、いざ大変なことになると何も言わないのである。
めんどくさいやつだ。

倒れなきゃいいけど。

珍しく私が重岡を案じてやっていると、

「Aってさ、彼氏作らんの？」

予想の斜め上からの質問が降ってきた。

「え、なんでいきなり？」

なんで動揺しているんだろう私は。
こんな質問、他の同期とか先輩によくされるじゃん。
重岡だからってなんで。

「いや、考えてみれば俺ら、相手の恋愛観とかよく知らんなって」
「確かに」

これだけ一緒にいるのにね。
確かに会社の同僚以上のことは知っているかもしれない。でも、会社の同僚が知っているような普通のことは知らない。