永瀬廉、濡れうさぎを拾う。

永瀬廉、ニュースを聞く。 ページ16

廉くんに拾ってもらって一ヶ月。
ぎくしゃくしていた歯車もようやくうまく回りだしてきた頃。

「ただいま〜」
「お、おかえり」

「まだ起きてんの？今日はご飯もいらんてゆったやろ。無理すんなよ？」
「余裕。それに、今日はニュースがあって…」
「ん、言うてみ？」
「や、お風呂の後でいいよ。私明日朝練ないから」

つい切り出し方に迷って後回しにしてしまった。

しばらくすると、黒いパーカーに身を包んだ廉くんが私のすぐ隣に腰をおろした。触れるか触れないか微妙なくらい近い距離にはいまだ慣れることがない。

「今日もオレ一日頑張ったわーというわけで、明日朝遅い永瀬君は飲酒しようと思いますわ」
プルタブをプシュッと開けて缶ビールを傾ける。
「く〜〜っ」
整った横顔と、上下する喉仏をじっと見ていると、廉くんはぺろっと唇を舐め、問うてきた。

「飲みたいん？」
「な、なわけ！」
「お子様には早いわな」

頭に手を置かれ、わしゃわしゃされる。そのあと髪を整えなおしてくれるところが優しさだけど。
お気に入りはサイドの編み込みなのか、指を沿わせている。

話すとき、無意識にかよく体に触れてくる意外な人懐っこさみたいなものにもいまだ慣れない。
体に触れるといっても変な意味じゃなくて、愛玩動物に対するようなものだけど…
腐ってもJKなのになぁ。
流石に廉くんの目が肥えているのか私が残念なのか。
JKJK連呼してくる割にはJK扱いされている様子はない。
いっそいやみだ。

「んで、ニュースて何？」
あぁ
「そろそろ花粉が飛ぶころじゃないですか」
「せやなぁ。あ、もしかして重度の花粉症とか？」

「つまりそろそろ春休みじゃないですか」
「せやなぁ。あ、どこか遊びに行くか？」

「それは嬉しいんですけど、そうじゃなくてね？」
「なんやねんもったいぶんなやぁ！」


「私の家族が春休み、様子見に来るって」


「…うぇーい」

途方に暮れた顔を見合わせた。

永瀬廉、嘆く。→←永瀬廉、甘やかす。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す