検索窓
今日:15 hit、昨日:40 hit、合計:86,892 hit

*8 ページ9

「んあァ……もう昼かァ」


非番である今日の昼を睡眠に使ってしまったことに落胆しながら、まだ重い体を起こすと、袖机には湯気の立っている昼食と包帯が置いてあることに気が付いた。

包帯の下には紙が挟んである。


“もうお昼ですので昼食を置いておきます。食べ終わったら声を掛けてください”


腹は減っていたのでありがたく昼食を頂いた。米粒ひとつさえも残さずに食べ終わると、俺は包帯をポケットに入れ立ち上がった。廊下に出ると、隣の病室から声が聞こえる。


「蟲柱様、鍛錬を再開してもよろしいでしょうか」
「まだ駄目に決まっているでしょう。今回はいつもより傷が深いんですから…」


紙に声をかけろとあったのを思い出して、俺は病室に入った。


「胡蝶、昼食助か___…その女…」


胡蝶がこちらを振り向くと同時に、横たわっていた女がベッドの上で手をつき深く頭を下げた。


「あら、不死川さんは水澪さんとお知り合いだったのですね」
「知り合いなど、私ごときがおこがましい限りです。以前私の任務での失敗を風柱様が補って下さっただけでございます」
「……」


俺は舌打ちを一つして目を背けた。胡蝶が「水澪さんは私と通ずるところもあるので、たしかに不死川さんと折の合わない部分もあるかもしれませんね」と、微笑を浮かべて言った。


「風柱様。蟲柱様のご様子から察するところ、私のことは報告しないで下さりましたよね。感謝申し上げます。本当に、ありがとうございます」


隙のない敬語で上辺だけの感謝を述べ、一層深く頭を下げる水澪。


「お前、感謝してねえならそういうこと言うなァ、顔上げろォ」


俺がそう言うと、水澪は目を見開いて、顔を上げた。

初めて見た水澪の、涙に濡れない子供の様な表情に、俺は心の中で驚いた。

*9→←*7



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆうきりさ(プロフ) - ツナミカワさん» ご指摘ありがとうございます!キャラの名前を間違えるとは…本当にすみませんこの駄作者…!直しますね! (2020年9月27日 7時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - 序章から申し訳ないですが富岡の漢字違いますよ正確には『冨岡』です (2020年9月26日 23時) (レス) id: f27e09d3f8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆうきりさ | 作成日時:2020年8月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。