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「私は寄るところがございますので、風柱様は先にお帰り下さい」
次の日、任務が終わるとそう言ってその場から去っていく水澪。
また鬼の遺族だったら、と考えた俺は、水澪の少し後をついていった。
(この景色…あの亮太郎の家の近くじゃねえかァ)
その事実に気づいた俺は、水澪の異様な行動に眉をひそめた。そのまま歩いていくと、やはり水澪は亮太郎の家の前で立ち止まった。
亮太郎の家では、葬式が行われた後の食事会が開かれているようだった。
水澪はそっと窓に近づいて中の様子を見ている。俺も水澪に気付かれないよう注意しながら中の様子を確認した。
「…奥様は本当に優しい方で…本当にお悔やみ申し上げます」
「はい…」
「おとうさん…」
亮太郎の父親はすっかり憔悴していて覇気が無く、亮太郎も心配そうにその様子を見ていた。
「…鬼に襲われたのでしたっけ…鬼狩り様は何故奥様を助けてくれなかったのでしょう…」
「間に合わなかったそうです…亮太郎が食べられるのは阻止できたらしいのですが…」
「そうなのですか…もう少しでも早ければよかったのに…」
「はい…少しでも…少しでも早ければ百合は…」
涙を流し始めた父親。
俺は助けられなかった悔しさを感じつつも水澪に視線を移した。また泣いているのだろうか。肩が震えている。
「どうして助けてくれなかったんだ…鬼狩り様がもっと強ければ…!」
「…ごめんなさい……」
水澪が誰にも聞こえないような小さな声で呟いた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!亮太郎…百合さん…お父様…」
その場にしゃがみこんだところで、俺は水澪の背を撫でた。
驚いたように顔を上げた水澪は、俺の姿を認めると、「申し訳ありませ…」と言って涙を拭い始めた。
「お前は優しいのな」
「!う…」
俺が言うと、水澪は更に涙を流した。
「そんなことは…私が優しければ…もっと…もっと…」
「気にし過ぎだァ。お前は何も悪くねェ」
「でも…」
「それでも悪いと思うなら、鍛錬すればいい」
「それが死んだ奴らへの供養だろォ」と俺が言うと、水澪は「はい」と小さく答えた。
俺は泣き続ける水澪に、「泣くなァ」と言いながら背をさすり続けた。
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ゆうきりさ(プロフ) - ツナミカワさん» ご指摘ありがとうございます!キャラの名前を間違えるとは…本当にすみませんこの駄作者…!直しますね! (2020年9月27日 7時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - 序章から申し訳ないですが富岡の漢字違いますよ正確には『冨岡』です (2020年9月26日 23時) (レス) id: f27e09d3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうきりさ | 作成日時:2020年8月22日 17時