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ガラガラガラ
玄関の開く音がした。俺はうとうとし始めていた水澪と亮太郎を「起きろ」と揺さぶった。
「帰ってきたぞ」
跳ね起きた亮太郎はそのまま水澪の腕から飛び出し、部屋から出て玄関へと向かった。俺と水澪も後を追う。
「おとうさん!」
かっちりとしたスーツを着ている男がそこには立っていた。亮太郎は父親の足に縋り付いて、また涙を流している。
「亮太郎…!お前達、亮太郎になにをしたんだ」
鋭い視線を投げてきた父親に俺が事情を話そうと口を開いた瞬間、水澪が深く、頭を下げた。
「申し訳ございません。亮太郎に怪我はありませんが、私達がここに来た時、奥様は既に鬼に襲 われ、息絶えていらっしゃいました。今はお庭で眠られています。奥様を守ることが出来ず、申し訳ございません」
水澪の言葉が終わらないうちに、男が血相を変えて庭へ出て行った。
俺達が後を続いて庭へ出ると、母親の遺体を埋葬した場所に男が膝をついて、真っ白な顔で「そんな…」とか細い声を上げている。
「おとうさん…ぼく…ぼく…こわかった…!」
「亮太郎…!一緒にいてやれなくてすまなかった…百合も…わるかった…!」
妻を抱きしめるように、土に這いつきながら言う父親。
「帰るぞォ」
もうこれ以上いるのは無駄だと、俺が水澪に目をやると、水澪はまた泣いていた。
「風柱様は…先にお帰り下さい」
「却下だァ。お前にはこれ以上何もできねえだろ、はやく帰るぞォ」
「いえ…私はお父様と亮太郎が落ち着くまで、ここに留まります。任務まではまだ、時間がありますから」
しっかりとした口調でそう言った水澪に、俺はため息を一つ吐きながら「わかったァ」と言って、泣き続ける親子をしばらく眺めていた。
___________
「本当に…申し訳ありませんでした」
「謝らないでください。妻は亮太郎が助かって本当に良かったと思っているはずです。ありがとうございました」
「おねえちゃん、たすけてくれてありがとう。…またあえる?」
亮太郎が赤く腫らした瞼で水澪を見つめそう言った。
水澪は心臓を掴まれたかのように目を見開いた後、「はい、いつかまた、絶対に」と悲し気に微笑んだ。
「行くぞォ」
俺は水澪の腕を引いて、その場から立ち去った。
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ゆうきりさ(プロフ) - ツナミカワさん» ご指摘ありがとうございます!キャラの名前を間違えるとは…本当にすみませんこの駄作者…!直しますね! (2020年9月27日 7時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - 序章から申し訳ないですが富岡の漢字違いますよ正確には『冨岡』です (2020年9月26日 23時) (レス) id: f27e09d3f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆうきりさ | 作成日時:2020年8月22日 17時