検索窓
今日:4 hit、昨日:16 hit、合計:86,897 hit

*19 ページ20

ガラガラガラ


玄関の開く音がした。俺はうとうとし始めていた水澪と亮太郎を「起きろ」と揺さぶった。


「帰ってきたぞ」


跳ね起きた亮太郎はそのまま水澪の腕から飛び出し、部屋から出て玄関へと向かった。俺と水澪も後を追う。


「おとうさん!」


かっちりとしたスーツを着ている男がそこには立っていた。亮太郎は父親の足に縋り付いて、また涙を流している。


「亮太郎…!お前達、亮太郎になにをしたんだ」


鋭い視線を投げてきた父親に俺が事情を話そうと口を開いた瞬間、水澪が深く、頭を下げた。


「申し訳ございません。亮太郎に怪我はありませんが、私達がここに来た時、奥様は既に鬼に襲 われ、息絶えていらっしゃいました。今はお庭で眠られています。奥様を守ることが出来ず、申し訳ございません」


水澪の言葉が終わらないうちに、男が血相を変えて庭へ出て行った。

俺達が後を続いて庭へ出ると、母親の遺体を埋葬した場所に男が膝をついて、真っ白な顔で「そんな…」とか細い声を上げている。


「おとうさん…ぼく…ぼく…こわかった…!」
「亮太郎…!一緒にいてやれなくてすまなかった…百合も…わるかった…!」


妻を抱きしめるように、土に這いつきながら言う父親。


「帰るぞォ」


もうこれ以上いるのは無駄だと、俺が水澪に目をやると、水澪はまた泣いていた。


「風柱様は…先にお帰り下さい」
「却下だァ。お前にはこれ以上何もできねえだろ、はやく帰るぞォ」
「いえ…私はお父様と亮太郎が落ち着くまで、ここに留まります。任務まではまだ、時間がありますから」


しっかりとした口調でそう言った水澪に、俺はため息を一つ吐きながら「わかったァ」と言って、泣き続ける親子をしばらく眺めていた。

___________


「本当に…申し訳ありませんでした」
「謝らないでください。妻は亮太郎が助かって本当に良かったと思っているはずです。ありがとうございました」
「おねえちゃん、たすけてくれてありがとう。…またあえる?」


亮太郎が赤く腫らした瞼で水澪を見つめそう言った。

水澪は心臓を掴まれたかのように目を見開いた後、「はい、いつかまた、絶対に」と悲し気に微笑んだ。


「行くぞォ」


俺は水澪の腕を引いて、その場から立ち去った。

*20→←*18



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (13 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:鬼滅の刃 , 不死川実弥
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ゆうきりさ(プロフ) - ツナミカワさん» ご指摘ありがとうございます!キャラの名前を間違えるとは…本当にすみませんこの駄作者…!直しますね! (2020年9月27日 7時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - 序章から申し訳ないですが富岡の漢字違いますよ正確には『冨岡』です (2020年9月26日 23時) (レス) id: f27e09d3f8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆうきりさ | 作成日時:2020年8月22日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。