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*17 ページ18

「お前、天然だなァ」
「…申し訳ありません」
「謝れとはいってねえぞォ」


南南東に向かえという指令に従って、私と風柱様は畑の横を走っていた。

私はまだ少し笑った余韻が残っている風柱様の声に気恥ずかしさを覚えつつ、周りの景色に目を向けた。


懐かしい。入隊してばかりの十三歳の時、この近くに任務に来たことがあった。たしかその時は冬で、雪が降っていたと思う。

結局私は先に到着していた先輩剣士に山の中腹で会い、任務が完了したと伝えられたので、そこで折り返して一緒に別の任務に向かったのだが、その道中、彼は「俺は初めて任務で鬼を斬らなかった」と言っていた。

何があったのかはいまだにわからないが、その時は理解できなかった彼の気持ちを、今なら嫌というほど理解できるような気がした。

__________


ガタンッ


任務で指定された家についたとたん、奥から大きな音が鳴った。水澪は家の中から、俺は庭からそこへ回り込むと、鬼がちょうど女の腿に噛みついて、泣いている男の子供に手を伸ばしているところだった。


「危ない…!」


向かい側から部屋に入った水澪はそう叫ぶと、鬼の手が届く寸前に男の子を抱きかかえてそのまま庭へと出た。意識をとられている鬼の頸を斬る。


「うわぁぁあ!おかあさあん!」
「風柱様!女性は…」
「死んでる」


口元に手をかざし、首筋に指をあてて俺は言った。子供の泣き声が大きくなる。


「うっ…おかあさん…!おかあさん…!」


母の面影と重ねているのか、子供はしゃがんだ水澪に必死に抱きついて泣きじゃくっている。
水澪は一瞬呆然としたような顔を浮かべた後、優しく子供を左手で抱いて、右手で頭を撫でた。


「ごめんなさい…お母様を助けられなくて、ごめんなさい…」
「うう…ひっ、うう…」


例のごとく涙を浮かべている水澪に、俺は「おい」と声をかけた。


「はやく母親を埋葬してやるぞォ」


頷いた水澪は、そのまま子供を抱き上げ、あやしながら部屋の中へと戻った。

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ゆうきりさ(プロフ) - ツナミカワさん» ご指摘ありがとうございます!キャラの名前を間違えるとは…本当にすみませんこの駄作者…!直しますね! (2020年9月27日 7時) (レス) id: a3d7f766b2 (このIDを非表示/違反報告)
ツナミカワ(プロフ) - 序章から申し訳ないですが富岡の漢字違いますよ正確には『冨岡』です (2020年9月26日 23時) (レス) id: f27e09d3f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆうきりさ | 作成日時:2020年8月22日 17時

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