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「俺さ、本業はフリーの画家なの。辞めようかと思ってたんだけどオーナーに止められてさ、こうして偶に出て来てるんだよね。だから俺に出会えたこと自体奇跡なワケ。だからもっと喜んでいいよ。」
ああもう、さっきからずっとこの調子。
全然ペースが掴めないし私が美華蝶さんがここに来てくれて嬉しい前提で話が進んでるのが可笑しくて仕方ない。
反対側を見てみると青煉さんは一向に話す気配もなく、足を組んだままイライラした様子。ミウは一体この男のどこが好きなんだ。
…ああもう、早く帰りたい。切実に帰りたい。1人で帰っちゃダメ？気まずい空気に何とか耐えながらアルコールを口に含む。…はあ、私何してるんだろう。
どんよりとした空気が漂う。
「俺次あるからじゃあまた。良かったら送り指名して。」
この空気でよくそれ言えたね…凄いね…。
誰もいなくなったけど、帰っていいの？
席を立とうとした時、目の前に柔らかい雰囲気の男性が現れた。
黄金に輝く髪、筋肉質な身体には少しアンバランスとも言える深い紫色のスーツに黒い蝶ネクタイ。かっちりとした格好なのにフープピアスを着けている辺りに少しチャラさを感じるけれど、数々の女性を虜にしてきたであろうニヒルな笑顔が中和させて上品な雰囲気が漂っている。
「ご一緒してもよろしいですか？」
まさかこれが自分の日常をガラッと変えてしまう出会いになるなんて思うはずもなかった。それに、自分の運命だけでなく、この人の運命まで変えてしまうなんて。
これが、新しい恋になるなんて。
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作者名：りる | 作成日時：2022年6月13日 19時
