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結城:眠らせる事を前提に話をすすめます。
Aちゃんに告知をした後、Aちゃんがどのような結論を出すか。谷口さんに報告するかしないか。Aちゃんがそれを決めない限り、谷口さんと西川さんがこのことを知るのは不自然になります。
F64:Aの性格と僕らの状況を考えると。僕に伝えないで決断するというのは予想がつきます。大事な事は1人で決めないでと伝えていますが、僕と遥輝には迷惑かけたくないって言うでしょう。その光景が目に浮かびます。
結衣さんやお母さんもそう思ったから、僕が最終決定をする…という事ですね。僕が決めて、それがAが決めた事と違っていても、そこはやむを得ない。Aの気持ちが優先なのは、僕も同じです。
眠らせて視力が回復している可能性にかけるか、別の医師の元で再び検査するか。ロサンゼルスでは手術をする必要がない、これが今いる病院での結論…ということですか。
結城:はい。そういう事になりました。正直言うと、医者として悔しい結果です。
F64:わかりました。
16日の試合終了後に関東へ移動するので、先生にお会いする時間がないです。17日の午前中には電話連絡します。よろしくお願いします。
僕と遥輝は病院を出て車に乗った。先生の話の後に運転できるような精神状態ではないと思ったから、今日は遥輝に運転をお願いしていた。
F7:室内練習場で気分転換するか?何も考えずに、バッティングマシン相手に打つのもいいかもな。
F64:…うん、そうする…。
F7:これだけは言っておく。雄也がどちらを選んでも、俺はAちゃんの幸せを願う事には変わらない。それは結衣もお母さんも、きっと同じだ。
明日からのプレーに支障が出ない程度に、悩め。
F64:…ありがと。
遥輝がいて、本当によかった…。僕ひとりだったら、きっと耐えられなかった…。
室内練習場で遥輝と別れ、僕はひたすらバッティングマシン相手に汗を流す。
カーン。
カーン。
規則正しい音だけが、あたりに響く。
カーン。
(りる、きみは…)
カーン。
(辛い事を思い出しても)
カーン。
(見えるようになりたい?)
カーン。
(それとも…)
カーン。
(見えなくてもずっと)
カーン。
(僕のそばに…)
カーン。
カーン。
(僕が選ぶ道は…)
カーン。
(奇跡にかけるか)
カーン。
(別の医師の診察を受けさせるか)
カーン。
(Aの声が、聴きたい…)
カーン。
カーン。
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作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年9月16日 4時