8 &作者より ページ28
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今日僕らが泊まるホテルは、東京ドーム近くのビジネスホテル。遥輝と結衣さん、僕とAにとって、しばらく日本では一緒にいられない…そんな夜になる。
試合が終わってから3時間ほど。日付は変わっていたので、眠っているかも…と思い、僕はそっと部屋に入る。Aは椅子に座って机に腕を置き、それに頭を乗せて眠っていた。ベッドに横になっていないという事は、起きていようと頑張っていたのだろう。
Aをそっとお姫様抱っこで抱えて、ベッドに運ぶ。久しぶりに抱えて運んだAは、以前よりもまた軽くなったと感じた。僕が見ていられない場所で、本当に大丈夫だろうか。体調不良で苦しんだりしないだろうかと、心配になる。
部屋着に着替え、Aの隣に横になる。頭の下に腕を差し込み抱き締めると、Aが目を覚ましたようで。
A:ゆうやさん…お帰りなさい。ここ…ベッド?私、椅子に座っていたのに…ごめんなさい…。
F64:ただいま。思っていたより遅くなって、起こしてしまってごめん。まだ朝には遠いから、一緒に寝よう。さ、目を閉じて。
首を振る、A。一度起きてしまうと眠れないかな。
A:ゆうやさん…お願いがあるの…。
F64:なぁに?
A:…ゆうやさんをもっと感じたい…。今日で最後だから…。
最後?結衣さんから連絡が来ていたキーワードが、Aから言われる。…ダメだ、絶対に否定しなければ!
F64:最後?どうしてそんな、悲しい事を言うの?
A:…だって私は、日本には戻れない…。
F64:誰がそんな事を言ったの?誰が決めたの?
Aの検査結果が出て、それが悪い結果ならば。手術を受けないで、僕はAを札幌に連れて帰る。手術をしなければ、Aが見えないままだとわかっている。でも僕は、Aと一緒にいる事と、見える事。片方しか選べないのならば、Aが見えなくても、僕のそばにいて欲しいと思っている。
Aは違うの?僕と一緒にいる事と、見える事。もちろん両方叶う事がいちばん幸せ。だけど、どちらか片方しか選べないとしたら、Aならどっちを選ぶ?
A:…何もできない私が、ゆうやさんのそばにいていいなんて、誰も思わないよ…。
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谷口選手、1軍登録!1軍の舞台に、2年ぶりに帰ってきました!
今シーズンの残り試合は少ないですが、テレビ、ラジオで精一杯応援しています。
2018.9.29 梨瑠(Riru)
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作者名:梨瑠(Riru) | 作成日時:2018年9月16日 4時