聴きたい、感じたい。 No.15

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シャワーを浴びてロッカールームに戻ると、宿舎に向かうバスは出発した後だった。
僕と遥輝はバスに乗らない事は報告済みだったから構わないのだが、宿舎に帰る中田さんと卓さんが残っていて、僕のロッカー前で怒りの表情を浮かべていた。

え？僕、2人に怒られる事を、何かしたか？



F6：雄也。お前はどうして、遥輝と2人だけで事を済ませようとするんだ？どうして俺たちを頼ろうとしない？

F9：いつ話をしてくれるのか待っていたけれど、最後まで言わないとはな。今日の円陣の時に言うかなって、少し期待して指名したんだが。

F64：えっ？


中田さんと卓さん、Aたちがロサンゼルスに行く事を、知っている…？


F64：…どうして…。

F6：2週間前か？栗山監督に、卓と2人で呼ばれてな。
　監督の自分には支えられない事も、年齢の近い卓と俺ならって、言ってくださった。

F9：奥さんが決めた事を支えるのが、雄也と遥輝の立場だろう。だが、それでお前たちまで潰れたら意味がない。
　俺は結婚もしてないから、的確なアドバイスはできんが。話くらいは聴いてやれるんだから。

F64＆F7：はい…。

F6：で、状況は？監督に話していない事があっても、隠さずに話せ。

F64：はい…。
　明日の夕方、僕は2人と一緒に渡米します。現地に着いた翌日に入院し担当医から説明があります。2人のお母さんも一緒に、4人で説明を聞きます。僕はAの病室に泊まり、翌日午後の便に乗って、神戸試合前日の夜に、関空に到着予定です。

F9：遥輝は行かんの？

F7：成田で3人を見送ります。入院するのは義理の妹、妻はその付き添い。俺が日本を離れる理由としては、雄也ほどの必然性がないです。

F6：奥さん妊娠しているんだろ？充分な理由だと思うけど。それに、アメリカで子どもを産むのか？

F7：はい。義妹が入院する病院で、既に札幌の病院からの引継ぎも終わっています。予定日が9月半ばなので、日本にいても出産に立ち会える時期ではない。妻を信じるしかないと思っています。
　Skypeを使えば産まれた子の姿を見る事はできるけれど、秋季練習に入ってから渡米しようと考えています。

F9：産まれた子どもに、すぐに会わない？それを配慮しないほどの、薄情なチームじゃないぞ、うちは。

F7：それでも俺は。子どもが産まれただけでは、シーズン中に渡米を考えていません。
　もちろん、妻や子どもの状態が生死に関わる場合は、優勝争いをしていても行かせてもらいますが。
　

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