聴きたい、感じたい。 No.13 (ページ19)

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瑞輝を少しからかっているうちに、グラウンド整備が終わり6回の守備につく。
ベンチを出てAの観戦している方向を見ると、Aと紫音ちゃんの姿がない。でも遥輝がその場にいる。サイン会か写真撮影会でもしているのかな。あのあたりはツアー参加者だろうから、口止め兼ねてサービスは必要だから…。ということは、2人はトイレ休憩…かな？

6回の守りも問題なく終わり、次は僕にも打順が回ってくる。
得点は、僕が打ったホームランでの1点だけ。何とか繋いで、追加点を取りたい。

先頭バッターの拳士さんがデッドボールで出塁すると、相手ピッチャーが変わった。次に出てきたのは左腕。初めて対戦する人なので、投球練習中も注意深く観察する。

ベンチからのサインは送りバント。去年までの対左投手成績を考えたら、当然のサインだった。
だがそれは、投球練習終盤の遥輝の声で覆る。

F7：雄也！佐賀思い出せ！そっくりだ！

えっ？佐賀を思い出せ？そっくり？まさか、Aのボールと、って事？
思わず遥輝を見上げると、頷くのが見えた。僕もわかったという意味を込めて、笑顔を作る。
遥輝の声が聴こえた監督も、意味がわかったようで、サインが変わった。

『お前にまかせる。思い切りいけ！』

1球目、ワンバウンドのフォークボール。球を離す位置は確かに、Aの投球とほとんど変わらない。でもフォークのスピードは、Aのストレートと同じくらい。ストレート同士だと20キロくらい差は出るかな…と思いながら次の投球を待つ。
2球目、アウトコース真ん中に来たストレートを空振り。スピードはAの方が遅いが、本当にAの球の軌道と同じだった。ボールが少しだけだが、縦に動いたように見えた。
3球目、真ん中低めに来た球をファールにする。1塁側のスタンドに入ったからよかったが、高く上がりすぎたので、内野に飛んだら即アウトだった。

カウント1-2。バントはできず、バットを振るしかない状況に追い込まれた。
運命の4球目、2球目とほぼ同じ軌道で来た！今度は絶対に当てる！そう思って振りぬいた球は、1塁線を抜けて長打コースに転がる。
僕はバットを投げ、1塁、2塁と走り、3塁コーチャーが手招きしているのを見てスピードを緩めずに走り、スライディングする。
僕の走塁間に拳士さんも1塁からホームイン！ファイターズに2点目が入った。

ベンチに笑顔を向けると、全員が僕に向かってガッツポーズ！嬉しい3塁打になった。
　